2025年3月16日(日)

Wedge REPORT

2025年2月13日

 1985年(昭和60年)4月、筆者は産休補充講師として初めて教職に就いた。働くこと自体が初めてで毎日が緊張の連続であったが、担任となった小学校2年生の子ども達がなんとも言えず可愛くて、とにかくがむしゃらに仕事に向き合った。

 余りに一生懸命に見えたのか先輩の先生方に「そんなに根詰めては倒れちゃうよ。少しは休みなさい」と心配されたが、若干23歳の新米教師はただ闇雲に体を動かしていただけで体の疲れなど感じず、夜の9時10時まで学校にいることは当たり前だった。

(Milatas/gettyimages)

 そんな筆者が唯一楽しみだったのは、放課後に校務員さんが作ってくれるおにぎりであった。ほぼ毎日、校務員さんは給食で残ったご飯でおにぎりをいくつも作ってはダルマストーブの上で焼いてくれた。

 それを食べながら夜遅くまで子ども達のノートを見たり、プリントの丸付けをして一言を添えたりしたものだ。若いからすぐにお腹が空いてしまい、焼きおにぎりがなんとも言えずおいしかったのを今でも覚えている。

「残った食材でまかない調理」処分の衝撃

 京都市教育委員会は、2025年1月27日、小学校の給食で残った食材でまかない調理を行い職場の教職員に提供したなどとして、市立小学校の女性給食調理員2人を減給処分としたと発表した。また事態を把握しながら注意や指導を怠ったなどとして、同校の校長も厳重文書訓戒とした。(「食材廃棄もったいない」給食残りでまかない作り教職員に提供、京都市が調理員らを処分【産経WEST】

 このニュースを見て筆者の年代の教員は皆ドキッとしたに違いない。

 記事によれば、調理員は2022年(令和4年)度から残った給食でまかない調理を始め、給食の残りと自宅から持ち込んだ調味料などを使って週に数回、おにぎりや唐揚げなどを作っては教職員らに提供していた。匿名の通報があり発覚し、2人はこのような行為をした理由として「食材を捨てるのがもったいない」「遅くまで仕事をしている教員のために何かできることはないかと思って作った」と話しているという。

 これについて、ネット記事では「こういう処分を「お役所仕事」と言いたい」と言った日本特有の判官贔屓コメントと、「完全に業務上横領」といった処分は当然とするコメントをSNSから紹介して、「教員の長時間労働」問題や「食品ロス」問題とも関連させ二項対立の社会問題として取り上げている。(「京都市教育委員会「納得いかない」「完全に業務上横領」給食余り物でまかない調理、懲戒処分の調理員に賛否両論」)(週刊女性prime)

 つまり彼女たちの行動は、食品ロス削減や教職員支援のためであり、今回の処分は過剰すぎるという意見と、衛生管理やコンプライアンスの側面から厳しい処分は当たり前という意見に世論は二分されているというわけだ。


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