要冷蔵食品を常温保存したことが原因で新潟市の50代女性がボツリヌス菌による食中毒を発症した。2月に新潟市保健所が公表した同事案、原因となった食品は公表されていないが、商品のパッケージ表側にはっきりと「要冷蔵」と表示されていたという。
ボツリヌス菌に汚染された食品はたとえ一口食べただけでも感染する恐れがあり、全身まひなど重篤な副作用に苦しんだり命を落としたりしかねない。自分や家族の命を守るために、食品の「要冷蔵」表示はしっかり確認したい。
常温保存で菌増殖、食べると全身まひにも
新潟市保健所によると、女性は昨年11月ごろにレトルト(加圧加熱殺菌)食品のようなパウチ容器に入った食品を購入、今年1月20日の正午ごろに1人でこれを食べた。食べる前にブルーチーズのような臭いがしたものの、2~3口食べ、おかしいと思い食べるのをやめた。
翌日午前1時ごろ、目がチカチカする、のどが渇く、ろれつが回らないなどの症状が出て、午前5時ごろに医療機関を受診。症状が悪化し、別の医療機関に救急搬送された。2月の発表時、女性は意識があるものの、全身にまひ症状があり、人工呼吸器を装着しているという。
患者の便や血清を検査したところ、C型ボツリヌス毒素陽性が判明。保健所の調査で、女性が要冷蔵食品を常温保存していたことが分かり、他に疑わしい食品を食べていなかったことから、この食品によるボツリヌス菌食中毒と推定されている。
ボツリヌス菌は、土壌や水などに広く生息し、酸素が少ない密封状態(瓶詰や缶詰、真空パック)で増殖し強い毒素をつくる。熱に強く、100度程度で長時間加熱しても殺菌できないが、120度で4分間以上の加熱処理で死滅する。
要冷蔵食品はこの条件で加熱処理されていないため、菌がいる場合、常温に放置すると菌が増える。感染すると、8~36時間で吐き気や嘔吐、便秘などが起こる。脱力感やめまい、物が二重に見える、まぶたが下がる、言葉が出にくくなるなどの神経症状が出るのが特徴で、治療が遅れると呼吸困難などで死亡するケースもある。
原因となった食品が何かは公表されていないが、商品のパッケージの表側に「要冷蔵」の表示があった。新潟市保健所によると、女性に視覚障害や知的障害はなく、ごく普通の50代で、むしろ普通よりしっかりしているように思える人のようだという。