2025年12月6日(土)

食の「危険」情報の真実

2025年2月26日

 新潟市の女性が食べた食品が冷蔵ケースに並べられて販売されていたかは気になるところだ。常温で販売されていた場合、購入後も常温で保存し続けてもおかしくないためだ。

 もちろん、たとえ常温で販売されていたものでも、パッケージに「要冷蔵」とある以上、家庭で常温保存してそれを食べたのは女性の責任だ。消費者基本法では、消費者自らが主体となって考え選択し、トラブル時に対応できる「消費者力」をつけることが求められており、食品購入後の保存や食べるかどうかの判断の責任は消費者が負う。

賞味期限と保存方法は常にチェックを

 ボツリヌス菌では2017年、生後5カ月の男児が蜂蜜を食べ、「乳児ボツリヌス症」で死亡している。蜂蜜はボツリヌス菌の芽胞(がほう、熱に強い休眠細胞)に汚染されていることがあり、腸内が未発達な1歳未満の乳児が食べると腸内で芽胞が発芽し、強い毒素が産生され発症する。このため、1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないよう、母子手帳などで注意喚起されている。

 死亡した男児は、母親以外の家族から市販のジュースに蜂蜜を混ぜて与えられていた。蜂蜜には「1歳未満の乳児に与えないでください」との表示があったが、ジュースを与えた家族は蜂蜜を乳児に与えてはいけないことを知らず、「蜂蜜は栄養豊富で健康にいい」と思い乳児に与えていたという。

 筆者の知人の60代女性は「私が子育てしていたころは、乳児に蜂蜜がダメという話は聞いたことがなかった」と話していた。それもそのはず、乳児ボツリヌス症が日本で初めて確認されたのは1986年で、それ以前に子育てしていた人には注意喚起がされていなかっただろう。

 新潟の女性のボツリヌス食中毒も、5カ月男児の乳児ボツリヌス症も、表示をチェックしていれば防ぐことができた事案だ。科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体「FOOCOM」の森田満樹代表は「最近はレトルト食品でも透明タイプのものが増えていて、チルド総菜(要冷蔵)と一見しただけでは区別がつかないものも多い。また、表側に『要冷蔵』とあっても、文字が下の方にあると見づらく、消費者がスルーする可能性はある」と指摘。その上で、「とにかく見た目では分からないので、食べる前に裏面の一括表示を確認してほしい。とくに賞味期限と保存方法はセットで必ず確認することを習慣づけてほしい」と呼び掛けている。

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