2025年12月6日(土)

食の「危険」情報の真実

2025年2月26日

過去にも死亡事故が発生

 この女性のように、レトルト食品と包装形態が類似した「レトルトもどき」の要冷蔵食品が原因と疑われるボツリヌス菌食中毒はこれまでにも発生している。筆者が記憶しているのは、「からしれんこん」(1984年、患者は13都県市にまたがり、疑い例含め11人が死亡)、「ハヤシライスの具」(1999年、千葉県、12歳女児に意識混濁・四肢まひなどの症状)、「あずきばっとう(ぜんざいの餅の代わりに平打ちうどんが入った食品)」(2012年、鳥取県、60代夫婦が意識不明の重体)などだ。

 ハヤシライスの食中毒発生後、消費者庁などは都道府県などの衛生担当者に向け、要冷蔵食品は容器包装の表側に分かりやすい大きさの文字(20ポイント以上)で表示するよう事業者に指導徹底を要請。しかし、表示は徹底されず、あずきばっとうで食中毒が発生した。真空パックされたあずきばっとうは、商品裏の原材料などが表示されている部分に保存方法は明記されていたが、表側に「要冷蔵」の表記がなかったのだ。

 自主回収された製造メーカーの他の食品からはボツリヌス菌が検出されておらず、当時筆者が取材した専門家は「製造過程や販売時に問題がないとすれば、購入後の保存が適切でなかったことで菌が増え、毒素を作った可能性がある」と指摘していた。

 あずきばっとうのボツリヌス菌食中毒発生の3年後にスタートした新たな食品表示基準では、要冷蔵食品は容器包装の表面に「要冷蔵」と分かるように表示することが盛り込まれた。

まぎらわしい食品、要冷蔵を常温で販売する店も

 ただ、「要冷蔵」と表側に表示があっても、スーパーなど販売店の担当者がレトルト食品と間違え、常温で販売されていることがある。消費者庁は2023年、こうしたケースが散見されることから、要冷蔵食品を常温で販売しないように注意喚起する通知を出している。

消費者庁の注意喚起のチラシ

 この通知以降も、要冷蔵食品を常温保存で販売するケースは後を絶たない。間違いに気づき自主回収した食品に、「めん」「こんにゃくのうま煮」「味付けのいなりあげ」「はちみつ紅茶ラテ」「味付けメンマ」「ビビンバの素」「具入りのカレーソース」「杏仁豆腐・牛乳寒天」などがあり、総菜から飲料、菓子などあらゆる食品に及んでいる。中でもカレーソースは、一般的にレトルト食品が多いだけに、「要冷蔵」の表示があってもレトルトと思い込んでしまう人がいてもおかしくないだろう。


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