2024年12月19日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年12月19日

 エラサスさんは「GMコーンは非GMよりも品質がよく、より高く売れる。子実だけでなく、茎や葉、穂軸は飼料やキノコ栽培に利用されており、無駄になるものがない。GMコーンの栽培で収入が増え、おかげで3人の子供を良い大学に行かせることができた」と満足げだ。

エラサスさんはGM技術の活用により、収入を拡大させた(筆者撮影)

 インドネシアのレスタリさんがGMコーンの栽培を始めたのは23年から。除草剤のグリホサート(製品名ラウンドアップ)に強い耐性のある新品種で、栽培中にグリホサートを1回まけばコーンは枯れずに雑草だけが枯れる特色に魅かれ栽培を決意した。

 1ヘクタールの農地で栽培したところ、従来品種に比べ収量が増え、除草剤の使用が大きく減った。種子の価格はGMの方が非GMより高いが、除草剤の削減コストや収量増による販売額の増加がそれを上回っており、トータルでみれば収入が増えた。

 また、雑草管理が楽になり、農業経営への負担が減った。レスタリさんの住む地域では、GMコーンの栽培面積の割合が23年は20%だったが、今年は40%に増えた。

レスタリさんは、GMのメリットとして、栽培へのコスト削減を挙げる(筆者撮影)

 レスタリさんは「GMコーンにしたことで収入が増えただけでなく、自由になる時間が増え生活も豊かになった。私の住んでいる地域でGMに反対する人はいないわね。農業を発展させるために新たな技術を使うことをみんな理解しているから。何よりもよい品種を選ぶことが収量増になり収入が増えるので、GMを利用する人が増えたのでしょう」と話す。

消費者、近隣農家…日本での高いハードル

 シンポジウム後のアンケートでは「途上国でGM作物を栽培する女性の農家が利益を上げて生活の質を向上させている姿を初めて見た。この実態をもっと日本の農家に知らせていくべきだ」との意見が多く寄せられた。また、あるメディアの記者は「小規模農場ながらGMコーンの栽培が成果をあげている点は、私の郷里の岩手など過疎地の農家が生き残っていく道を示しているように感じた」と話していた。

 GMに好意的な意見が多いが、実際に日本でGMを栽培できるかはまた別の話で、栽培には大きなハードルがある。ひとつは消費者の反応だ。

 GMは農家にはメリットがあるが、消費者にはメリットが見えない。食料自給率や食料安全保障の強化、コーンや大豆などの価格上昇の抑制などを考えれば、消費者にもメリットがあるのだが、直接的なメリットを感じないこともあり、消費者の支持が得られにくい。実際に栽培が始まれば、消費者の不安をあおるフェイクニュースなどが広まるなどし、栽培する地域全体の農作物が風評被害で売れなくなる可能性がある。


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