日本が抱える地方衰退や人口減少といった課題に対し、観光産業が地方創生に大きく貢献すると考えられている。観光と地方創生を繋ぐ方法はいくつかあるのだが、非観光事業者と観光が結びつくことは必須である。
非観光事業者が観光事業者と連携することによって観光地域としての魅力も増すのだが、うまく運用すれば非観光事業者の事業自体も成長する可能性が出てくる。例えば、製造業が観光客向や一般人向けにオープンファクトリーを行うようなことである。観光客がオープンファクトリーでその製品の製造工程を体験し、通常は表に出ないようなストーリーを知ることで、その地域で製造される製品のファンになり、地元に戻ってからもその製品を購入するというインバウンドとアウトバウンドのループが構築される可能性もある。
しかし、地域には様々な事業体があるのだが、事業分野が違うとそれらの事業が連携することは簡単ではない。例えば神奈川県相模原市は宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめとする先端技術を開発する企業と自然あふれる中山間地域があるけれども、それぞれが互いに交流することはあまりないという。メディアツアーを企画する際も、先端技術をやる東側と中山間地のある西側でそれぞれ独立して開催している状況と聞く。観光というキーワードがあることによって異なる分野の事業体が連携することがよりスムーズになるかもしれないのだ。
その際に、どこがその連携の主体になるのかが問題である。行政、商工会議所、地域の中核的企業、DMO(Destination Marketing/Management Organization)等が考えられるが、本稿では全国各地にある青年会議所(JC)の可能性を考えてみたい。
着目した「アドベンチャーツーリズム」というコンテンツ
日本青年会議所は、全国約700の地域青年会議所(LOM)を擁し、20歳から40歳までの若手経済人約3万人が所属する団体である(40歳で引退となる)。「修練」「奉仕」「友情」の三信条を基に、地域課題の解決や持続可能な社会の構築に向けた様々なプロジェクトを展開している。
2024年度は「地域経済活性化会議」というイニシアチブのもと、インバウンド観光を活用した地方創生に注力した。筆者はこの1年間そのインバウンド観光プロジェクトの立ち上げからアドバイザーとして推移を見てきたのだが、JCが観光を梃に地方創生を担う大いなる可能性を感じた。