世界経済フォーラム(WEF)によって世界119カ国を対象にしたトラベル&ツーリズム発展指数(TTDI)の2024年版が発表された。WEFによれば、TTDIは、「トラベル&ツーリズムセクターの持続可能性と強靭な発展を可能にする要因や政策を測定し、ひいては国の発展に寄与するもの」である。つまり潜在性を含む各国の観光競争力を現したものと解釈してもよいだろう。
前回の21年版のTTDIにおいて日本は1位であり、今回は3位になっている。これからこのTTDIに関する記事が国内でも種々出てくるのではないかと思う。
こうしたランキングものは一見わかりやすいゆえに、時に必ずしも正確ではない記述をされることもある。筆者はこのTTDIの日本調査の担当でもあり、少々TTDI2024の解説とその活用に関してお話したい。
TTDIがそもそも何であり、どのような仕組みであるかは昨年、「世界で1位になった日本の観光ランキング その生かし方」および「日本が世界に誇れる4つの「観光インフラ」って?」「日本観光 ここを磨けば世界も注目する商品が作れる」の3回に渡ってWedge ONLINEで語っているので、それも参照いただきたい。
24年のTTDIは下記の点で以前から変更されている。
・ 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が最近開発したトラベル&ツーリズムの環境・社会的影響に関する指標など、新たに入手可能となったデータを活用
・ 今回除外された国:カーボベルデ、 チャド共和国、香港 、 レソト、イエメン
・ 今回加えられた国:アルジェリア、 バルバドス、イラン、 ジャマイカ、オマーン、 ウズベキスタン、ジンバブエ
観光にも影響を及ぼす「地政学」
TTDIは 1)経済的環境、2)旅行・観光政策と実現にむけての状況、3)インフラストラクチャーとサービス、4)旅行・観光の資源、5)旅行・観光のサステナビリティという5つのディメンション(評価視点)から構築され、それぞれのディメンションには評価のピラー(柱)がある。詳細は昨年の記事を参照されたい。
コロナ後の変化を反映して、24年度は特に1)経済的環境の4つ目の柱である「人的資源と労働市場」における「就業者の資格」という評価指標、5)旅行・観光のサステナビリティの「環境サステナビリティ」に「旅行・観光のエネルギー・サステナビリティ」の項目が大きく変更されている。
前段の「人的資源と労働市場」の変更は観光関連事業者のみなさんも納得されると思うが、5)旅行・観光のサステナビリティにおいて「旅行・観光のエネルギー・サステナビリティ」が重要視され始めたことにも留意していただきたい。エネルギーの構成やコストが今後変わってゆく可能性があり、そこには諸外国との地政学が大きく関わってくるのである。海外へのアウトバウンドだけではなく、インバウンドや国内旅行においても地政学を意識しておく必要があるのだ。