前回、「日本が世界に誇れる4つの『観光インフラ』って?」において、世界経済フォーラム(WEF)の観光ランキングTravel & Tourism development Index(TTDI)の5のサブインデックスと17のピラー(柱)のうち、ハード面(社会インフラ)について取り上げた。今回は、日本の観光のソフト面(観光コンテンツ)に関連する3つの柱を取り上げ、世界が注目する日本の観光コンテンツづくりについて考察する。
四季折々の多様な自然が楽しめる日本
1点目は、「Natural Resources (5 indicators)」である。Natural Resourcesとは「自然資源」を表しており、景観、自然、動物相の豊かさなどの観点から指標が定義されている。
この柱は、利用可能な自然資源と屋外観光活動の発展を測定するものであり、国連教育文化科学機関(ユネスコ)の自然世界遺産の数、国内の動物相や生物多様性の豊かさ、国立公園や自然保護区の広さなども指標として含まれている。
日本政策投資銀行と日本交通公社が毎年共同調査を行っている「訪日外国人旅行者の意向調査」の2022年度版 によると、”旅行者が訪日旅行で体験したいこと”という設問では、アジア・欧米豪の旅行者で共通して「自然や風景の見物」が第1位、「桜の鑑賞」が第2位となっており、いずれも50%以上の回答者から支持されている。日本が持つコンテンツの中でも特に四季折々の自然資源は訪日外国人観光客をひきつける要素になっていることが伺える。
一方で、総合点で第1位の日本のこのピラーのスコアが7点満点中4.9、世界12位という点は、一層の飛躍の余地があるという示唆とも解釈できる。具体的には、見物・鑑賞の対象として日本の花鳥風月を楽しむことから、体験として高付加価値化し、その価値を一層遡及していく余地が残されているのではないかと考えられる。
数年来、観光庁や環境省においても、アドベンチャーツーリズムや、国立公園満喫プロジェクトが推進されているものの、コンテンツは作ったが販路がない、高付加価値なコンテンツを求める外国人に刺さるコンテンツを開発できていないといった課題が散見される。この恵まれた環境を野放しに味わってもらうところから、一歩進んで、環境を誰にどのような形で堪能してもらうかを、マーケティング施策検討の基本に改めて立ち返り、検討する余地があるのではないだろうか。