少子高齢化による人口減少は日本の国力低下を直撃しているが、円安でも稼げない貿易赤字国家となり、家電、造船、半導体などでも海外勢に敗北。車も欧米、中国のEVの流れに引っ張られ、これまで同様に利益を上げられるのか怪しくなってきた。アニメやゲームはまだ強みがあるが、音楽や映画・ドラマは韓国が成長し日本の存在感は確実に薄れている。
筆者は20年以上、香港に携わっているが、海外から日本を見ると、日本のプレゼンスが落ちていることを実感している。100万ドルの夜景を作り出していたネオンサインも、一昔前は日本企業の看板が多かったが、今では数えるだけになってしまった。
新型コロナウイルス下では「DX敗戦」という言葉まで出現した。こうなると「日本企業が世界で勝てるのは、一体何だろう?」と答えが見つからない。もし日本がこのまま「モノづくり」にこだわるとするならば、どうするべきか考えてみたい。
モノづくりの中心は移動し続ける
日本人にとって「モノづくり」という言葉は心の琴線に触れる言葉だろう。基本的に日本は「ゼロから1」を生み出すのは苦手で「1から100」というブラッシュアップを得意とする国民性だ。戦後、ソニーやホンダといった創造性豊かで個性的な企業もあるが、全体から見ればほんの一部であり、基本的には、既存の技術を取り入れ、発展させてきた。
そのビジネスモデルが今、壁にぶち当たっている。コストを下げるために海外に製造拠点を作り、価格競争力を維持しても、モノが売れなくなった。最近、発表されている決算で過去最高益を上げている企業が多いが、連結決算では海外子会社が米ドルで稼いだものを円に換算することによるトリックも少なくない。
18世紀に起こった産業革命により英国は世界の工業をけん引し、弟である米国も工業化を取り入れた。日本も明治以降に一気に工業化を進め、戦後になって高度経済成長期を築いた。今は中国が世界の工場となっているが、人件費が高騰し東南アジアにシフトし始めているなど、世界の工場は移動してきた歴史がある。
その流れで行けば、中国や東南アジアのあとは、世界最大の人口を誇るようになったインドが考えられ、最後の最後はアフリカ諸国になるのだろう。つまり、日本が成功してきたモノづくりのやり方では、ほぼ永遠に勝ち目はない。
ここは考え方を変え「安くて質の良い商品」という大衆向けから、付加価値がついた「プレミアブランド」にシフトしていくのが最善の道だろう。そしてプレミア化成功企業の中から、いくつかがラグジュアリーブランドまで発展していく形だ。