2024年12月19日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年12月19日

 消費者だけでなく、近隣農家の反対も懸念される。インドネシアのレスタリさんは地域の反対はなくGM栽培が可能だったというが、日本の場合、GMへの理解が農家の間でも進んでいないこともあり、近隣農家の了承を得られるかは分からない。風評被害がGMを栽培しない農家にも及ぼす懸念もあり、むしろ反対することも起こり得る。

 仮に地域の了承が得られ栽培できたとしても、GM反対を掲げる活動家が全国から押し寄せて嫌がらせをされるかもしれない。過去には試験栽培で植えたばかりのGM作物の苗が引き抜かれる〝事件〟もあった。

 当時のことを知る関係者によると、警察に相談しても何の対応もしてもらえなかったという。これだけが原因ではないだろうが、その後に多くのGMの試験栽培が中止され、本格的な商業栽培が行われないままだ。

 反対派の圧力に屈したままというのもどうかと思うが、これまでは日本の食料供給が足りなくなるといったこともなく、何の不都合もなかった。あえてGMを利用する必要がなかったともいえる。

バイテク技術活用は必須

 しかし、日本がおかれた現状を考えれば、GMを含めたバイテク技術の活用は必須だ。農業法人トゥリーアンドノーフ代表で、日本バイオ作物ネットワーク理事長の徳本修一さんは「これまではバイテクがなくても農業ができたが、これからはそうはいかない」と指摘する。高齢化と担い手不足で農業経営体あたりの耕作地面積が増えているためだ。

 徳本さんの場合、現在110ヘクタールを3人でオペレーションしているが、2030年には1000ヘクタールへの拡大を見込んでいる。「生産力を維持するには今までのやり方では無理。日本の農業は雑草との戦いなので、除草剤耐性のGMなら利用する農家が多いだろう」。

 徳本さんは現在、日本でのGM栽培を模索中という。ただ、新たな挑戦はリスクもともなう。反対派からの嫌がらせで苗が抜かれたり、収穫した農作物のリスクをあおるフェイクニュースを流されたりすれば、農業経営を危うくしかねない。

 しかし、徳本さんは「当時は泣き寝入りするしかなかったかもしれないが、今は誰もが情報を発信できる時代。もし私の農場で同様のことが起きたら、ありのままを撮影して世界に発信したい。GMに限らず新しい科学技術に不安を抱く消費者は多い。でも、情報をみせていくことで、そうした不安は払しょくされていくと思う」。


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