2024年7月16日(火)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年5月17日

日本政府が「借金まみれ」であることは国民の周知の事実だ。だが、なぜ借金が減らなくなったのかについては誤解も多い。「Wedge」2024年5月号に掲載されている「平成全史 令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 平成以降の財政史は「財政健全化」と「デフレ脱却」にもがき続けた時代と言える。「政府債務残高」を「体重」にたとえれば、それはまるで「体重を減らそうとしてダイエットしたものの、努力が続かずリバウンドを繰り返し、もはや後戻りできないほど太ってしまった人間」のようだった。さながら、ダイエットは「財政健全化」で、リバウンドは景気対策に伴う「財政出動」とたとえられるだろう。

コロナ対策で日本の借金が増えたのは事実だが、膨らみすぎた真因は別にある(BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 ダイエットの大敵はリバウンドである。日本の財政も橋本龍太郎内閣以降、一生懸命、体重を減らす努力(財政健全化)に取り組むも、リバウンドするという繰り返しであった。その様は、1975年以降の日本の政府全体(一般政府)の財政収支対国内総生産(GDP)比を示した図1にも表れている。

図1 日本は国民のために使われる支出を収入で賄いきれない状態が続いている 写真を拡大

 バブル崩壊後には財政赤字が拡大した。97年に橋本内閣の財政構造改革によりその赤字を減らそうとしたが、同年11月の金融危機で大手金融機関が破綻し、大規模な貸しはがしが起きて倒産する企業が相次いだ。その景気対策のために再び財政赤字が増えた。98年に首相に就いた小渕恵三氏は、自嘲して「世界一の借金王」と呼んだ。

 2001年からの小泉純一郎内閣は、「自民党をぶっ壊す」と標榜して自民党総裁選に勝ち、既得権益にメスを入れ、財政支出も抑制した。これで財政赤字が減り始めたのだが、今度は08年のリーマン・ショックと11年の東日本大震災が襲った。復興対策も相まって、財政支出は膨張した。12年以降の第2次安倍晋三内閣では、消費税を増税したこともあり、税収が増え始めて、財政赤字が減っていった。しかし、20年以降、新型コロナウイルス対策のために膨大な予算を借金で賄った。

 平成以降、日本にはおよそ10年ごとに大きな危機が訪れ、国債増発に伴う財政出動によってリバウンドし、元には戻れないほどの体重にまで膨れ上がった「ダイエットの失敗例」のような歴史であった。


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