2024年12月7日(土)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年5月10日

 ドル/円相場は160円付近からピークアウトしているが155円で高止まりしている。2022年3月初頭の113円近辺と比較すれば「随分遠いところに連れて来られてしまった」との思いを禁じ得ない。常々、述べてきたことではあるが、日本経済は円安を所与の条件としつつ、その有効利用策を検討する段階に入っているように思う。

円安は常態化したと言え、それに応じた経済運営が求められている(AP/アフロ)

 現状、円安抑止の処方箋は為替介入や利上げといった裁量的なマクロ経済政策を脇に置けば①対内直接投資促進、②インバウンド奨励の2点が注目されやすいが、今回の本欄ではこれらとは異なる視点を提供してみたい。それはレパトリ減税とNISA国内投資枠という考え方である。

 このまま円安相場が解消されずに持続した場合、いずれの政策も耳目を引く可能性が大きく、実態経済やビジネスにも影響し得る。簡単に紹介し、その政策意義を見ておきたい。

過去最大を更新する日本企業保有の外貨

 まずは前者のレパトリ減税案とは「日本企業が保有する外貨を国内へ送金する際の法人税を減免する」という政策である。これにより一時的に日本企業の保有する外貨が国内へ還流し、円買い圧力を高めることが企図されている。

 対症療法には違いないが、円安抑止策としては分かりやすいがゆえに、金融市場では断続的に注目されてきた経緯がある。一部報道によれば、政府・与党が6月にまとめる経済・財政政策の基本方針「骨太の方針」に盛り込まれる可能性があるという。

 確かに、円相場の需給改善を志向するにあたって企業部門が保有する外貨は政府の抱える外貨(≒外貨準備)と並んで使える「最後の砦」であり、為政者の目に留まるのは自然な展開である。21年度の「海外事業活動基本調査」によれば日本企業の海外内部留保利益は約48.3兆円と過去最大を更新している(図表①)。


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