2024年6月16日(日)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年5月10日

 こうした状況を踏まえれば、国内投資枠が新設された場合、海外投資に流れていた資金の一部は国内投資へと代替される展開が予見される。言い換えれば、国内投資枠が増えた部分は選択可能性の拡大でしかない。

 国内投資に配分された分、海外資産への投資(≒円売り)は減ることになるのであれば、それは立派な円安抑止策になる。主要7カ国(G7)である日本では資本規制が難しい以上、インセンティブ設計として流出を減らすような工夫は求められる。

英国が先行事例に

 この動きは実は他国で検討され始めている。24年4月、英国政府は春に発表された予算編成方針においてNISAの原形とされるISAに関し、英国株投資の非課税枠を現在の年間2万ポンドから2万5000ポンドに引き上げる意向を表明している。当然、英国企業への投資を促して金融市場を活性化させる狙いがある。

 もちろん、英国は今秋にも総選挙を控えており、政権交代の可能性をはらむ以上、同案の先行きは不透明ではある。しかし、仮に英国でこの方針が固まれば日本でも同じ方針を求める機運が高まるのではないか。家計部門の運用資金が海外ではなく国内に配分されるようになれば、日本株は上昇するし、円売りも抑制されて一石二鳥だ。

 波及効果が分かりやすい(かつ大きな副作用も無い)ゆえ、日本でも追随を求める声が今後大きくなってくる可能性はある。幸いまだ新NISAが稼働して初年度であり、新しい選択可能性を提示するには良い時期であることも助けになろう。

 いずれにせよ「家計の円売り」に伴う円売り圧力を緩和する政策は利上げや為替介入は元より、先に紹介したレパトリ減税案と比較しても持続力を持ち得る円安抑止策であるし、政府・与党の掲げる資産運用立国の方針とも合致する。裏を返せば、「家計の円売り」を早い段階でけん制しておかねば、そのまま「帰ってこない外貨」となってしまう部分も出てくる恐れがあるため、早めに手を打った方が良いようにも感じられる。 

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