2024年11月21日(木)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年4月11日

 デジタル赤字についてはこの1年で取りざたするメディアやアナリストが非常に急に増えた。問題提起した1人として、こうして世論が大きくなっていくことは嬉しく思う。

 しかし、その国際比較については統計上の扱いが非常に煩雑で厄介なこともあり、まだ進んでいない。これから必ず議論が及ぶ論点になるはずであり、今回は簡単にその論点を深掘りしてみたいと思う。

(farakos/Kumer/UmbertoPantalone/gettyimages)

 筆者の知る限り、デジタル赤字の国際比較はまだ、ほとんどの識者が手を付けていない。3月26日、財務省に設置された国際収支有識者会合では、国際収支構造の大きな変容の代表例としてデジタル赤字の拡大が言及されている。

 この点、昨年来、筆者はデジタル赤字にとどまらず、研究開発サービスや経営コンサルティングサービス、そして保険・年金サービスの赤字などが拡がっていることも念頭に「新時代の赤字」として理解すべきと主張してきた経緯がある。筆者が初回会合で提出した資料にもそう明記している(第1回国際収支から見た日本経済の課題と処方箋 資料 : 財務省 第1回国際収支から見た日本経済の課題と処方箋)。

 ただし、「新時代の赤字」においてデジタル赤字がとりわけ大きく、潜在的な拡大余地を秘めているのは事実だ。2023年時点のデジタル関連収支赤字は約▲5.5兆円と過去最大を更新し、同じく過去最大の黒字を更新した旅行収支黒字の約+3.5兆円を優に食い潰している。観光産業という肉体労働で稼いだ外貨は、今や頭脳労働で生み出されたデジタルサービスへの支払に消えている。


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