2024年11月22日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年4月11日

日本はOECD最大のデジタル赤字国

 なお、日本のデジタル関連収支は▲364億ドルの赤字で、これはOECD加盟国で最も大きな赤字である。デジタル関連収支の赤字は日本だけの話ではないが、日本のそれは特に大きなものであるという事実は指摘可能だ。

 もちろん、ドイツも相応に大きなデジタル赤字を抱えてはいるものの、周知の通り、同国は世界最大の貿易黒字国でもある。よって、デジタル赤字を筆頭とするサービス収支が外貨需給を歪め、ユーロ相場を押し下げるという話にはなりづらい。

 所詮、日本も貿易収支で大きな黒字を稼いでいれば、デジタル赤字は話題にならなかったのではないかと感じる。近年、日本でデジタル赤字を筆頭とする「新時代の赤字」やキャッシュフロー(CF)ベース経常収支といった筆者の議論が耳目を引いたのは「長引く円安」という時代背景に合致していたからだと自己分析している。円安という現象を読み解く最適解として需給構造、ひいては国際収支の議論に注目が集まっており、財務省が有識者会合を設けるまでに至っているのが現状ではないか。

 「他国はどうあれ、日本にとっては小さな問題とは言えない」という目線でデジタル赤字は今後、ますます強い経済的・政治的関心を引く分野になるだろう。なお、日本のサービス収支はデジタル分野に限らず、収支全体で見てもOECD最大の赤字であり(図表④)、サービス取引が国際化される中で取り残されている状況は否めない。必死に旅行収支の黒字で穴埋めをしても、それ以外のサービス取引から漏れる外貨が多過ぎるという問題は今後、労働供給の制約が厳しくなる日本からすると厳しい現実と言わざるを得ない。

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