ニューヨーク市では、2026年1月に就任したゾーラン・マムダニ市長が「民主社会主義」を掲げ、住宅、保育、交通への政府の関与を広げている。一方、日本では、社会主義を掲げる政権ではないにもかかわらず、物価が上がれば給付金を配り、電気、ガス、ガソリンの価格を補助し、教育や保育の無償化を広げている。
ニューヨークでは、民主社会主義という理念が政策を生んでいる。日本では、個別の応急措置の積み重ねが給付金や補助金への依存を強める「大きな政府」を形づくっている。
前者では、政府と市場のどちらに何を任せるのかが選挙の争点になる。後者では、大きな政府を目指すとは明言されず、一つひとつの生活支援策として進むため、政府をどこまで大きくするのかが争点になりにくい。ここに、日本の給付金・補助金行政の見えにくい危うさがある。
本稿でいう「大きな政府」とは、単に政府支出の規模が大きい政府ではない。市場や市民社会が自ら調整すべき領域へ政府が入り込み、価格を抑え、費用を肩代わりし、誰に何を配るかまで決める政府である。
もちろん、安全保障や警察、司法、基礎的な社会保障など、政府でなければ十分に担えない仕事はある。問題は、政府の役割が市場の不足を補う範囲を超え、日常生活の価格や市民の選択を恒常的に管理することである。
マムダニ市政が実際に始めたこと
マムダニ市政を、公約だけで評価するのは適切ではない。就任後に実際に何を始めたのかを見る必要がある。
象徴的なのが家賃凍結である。26年6月25日、ニューヨーク市の家賃ガイドライン委員会は、家賃安定化措置の対象となる約100万戸について、1年契約と2年契約の家賃を凍結した。2年契約まで凍結するのは同委員会の歴史上初めてであり、約240万人に影響する。
委員会は形式上独立しているが、マムダニ市長は委員9人のうち6人を任命している。選挙時に掲げた家賃凍結は、この委員会の決定によって実現した。
もっとも、マムダニ市政は価格を抑えるだけではない。今後10年間で、アフォーダブル住宅を20万戸新設し、さらに20万戸を保全する計画を発表し、許認可にかかる期間の短縮も打ち出している。
