今日の衛星画像解析は、必要なデータを入力してAIが自動的に行うのであって、分析官が画像を目視で解析していた時代は過去のものとなりつつある(もちろん、分析官による確認作業は行われる)。上記の「加工されたインテリジェンス」も、得られた衛星画像をもとに一般に公開されたデータを総合してAIが分析し生成した上で販売したもので、それ自体は一般の商業活動の範囲内と言い張ることが可能だ。
問題はその「意図」なのであるが、これは確認が難しい。また、中国でなくても民生技術の発達した国であれば、いずれにおいても起こり得ることだ。
技術を〝活用〟する中国
以上の現象が特に問題となるのは、これが中国のような軍民統合の権威主義国家にとって、非常に都合の良い政策手段として利用されるということだ。
中国においては、軍と民間が截然(せつぜん)と区別されておらず、かつ最終的に民間は官(中国共産党)の指導に従うという政治・経済環境の中で、民間主導で発達した技術や情報で軍事利用可能なものを、国家の関与を曖昧にした形で政策的に利用することができる。汎用性のある高度な技術をもつ「民間企業」は、中国政府にとって極めて都合の良い政策手段だ。
今日、中国政府は公式にはイラン戦争に対する軍事的関与を否定しており、「民間企業」であるMizarVision社によるデータの公開についても、中国国防部は「虚偽情報」として一蹴している(4月9日、張暁剛報道官)。
しかしながら、同社がAIを活用して得られた上記のような情報を一般に提供していることは事実であり、イラン戦争に対し中国が中立の立場を主張するのであれば、政府として同社の活動を封じることは容易なはずだ。それをしないのは、同社の活動が中国の利用し得る政策手段のひとつとなっているからに他ならない。
今般のイラン戦争が中国にとって持つ意味は複雑だ。紛争当事国のいずれとも関係の毀損はできれば回避したいし、米国による介入も米国の関心を中東にくぎ付けにして米国の武器・弾薬を消耗させることは望ましいが、油価の高騰が長期化したり、イラン国土の荒廃により中国の投資による利益が失われたり、ましてや体制転換を経て親米政権が樹立されるような事態は避けなければならない。
