淡水プラントに依存する中東諸国
トランプ大統領は、イランの発電所とインフラを攻撃すると何度か主張している。
ジュネーブ諸条約第一追加議定書第52条では民用物の攻撃の禁止、第54条では住民の生存に不可欠な物の保護が謳われており、民間インフラへの攻撃は戦争犯罪になる可能性が高い。それでも攻撃すれば、イラン沿岸部は電気に加え水も失う。
中東諸国は、淡水に恵まれていない。イランからトルコ、エジプトまで広がる中東17カ国の人口は、第一次オイルショックがあった1973年の1億5000万人から、5億1500万人まで増えた。世界人口の約6%を占めるが、中東には自然の淡水は世界の2%以下しかない。
世界で深刻な水不足に直面する25カ国の内15カ国は中東に位置している。世界資源研究所によると人口の83%が水不足に直面している。
そんな中ではイランは内陸部に川もあり、地下水にも比較的恵まれている。しかし、過剰な使用と少雨があり、過去5年間渇水に悩まされている。渇水のテヘランから首都を移転する案も出ているほどだ。
海岸部では淡水は不足しているので、浸透膜を利用し海水を淡水に変えるプラントを稼働し必要な水を得ている。
23年末時点において世界で稼働している1万7910の淡水化プラントのうち4897が中東にあり、1日当たり2900万立方メートル(m3)の淡水を生産している。世界の生産量の約42%に相当する。
イランは中東諸国の中では淡水化プラントの利用比率が少ない国だが、それでも163のプラントを持ち、1日当たり100万m3の淡水を製造している。
クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーンの湾岸6カ国は淡水化プラントへの依存も高い。図-2が6カ国の全淡水と飲料水での淡水化プラントへの依存度を示している。
米国の発電所爆撃はタブーをなくす
中東の人口増加を支え、常時流れる川がないアラビア半島のドバイ、ドーハなどを世界有数の都市に押し上げたのは、海水から淡水を作り出すプラントだ。
淡水化プラントは、電力を必要とする。世界の淡水化プラントが消費する電力は年間1000億キロワット時(kWh)。全世界の電力消費量の0.3%以上ある。
湾岸地区の淡水化プラントの93%は天然ガス火力で運転し、残りの大部分は石油火力で運転している。通常発電所と淡水化プラントは隣接している。
発電所が爆撃されれば、淡水化プラントは停止し、周辺はたちまち水不足に陥る。電気と同時に生存に不可欠な水もなくなる。数週間で備蓄を持たない街から人は消える。
イラン政権は、発電所などのインフラが攻撃されれば、湾岸諸国の淡水化プラントも攻撃対象にするとしている。


