今までも淡水化プラントが攻撃対象になったことはあるが、小規模攻撃だった。大規模な攻撃は、91年の湾岸戦争の際にイラク軍がクウェートとサウジアラビアの淡水化プラントを対象に原油を海面に放出し、海水の取入れを妨害する攻撃をしたケースだ。
今回の戦争でも小規模なドローンによる攻撃はあったが、水資源への本格的な攻撃は明らかな戦争犯罪でもあり、避けられていた。
しかし、米国がイランの発電プラントを攻撃すれば、タブーはなくなる。イランが湾岸諸国の淡水化プラントあるいは発電所をドローンで攻撃する可能性が出てくる。発電所が止まればプラントも止まる。
数が多い淡水化プラントを全て防御することはできない。水は、火力、原子力発電所の冷却水としても必要だ。イランが攻撃すれば水も電気もなくなった国は街を維持することが困難になる。
米国がインフラへの攻撃を再開すれば、最悪のシナリオが現実になるかもしれない。繁栄を極めていたドバイなどの湾岸の都市も急速に寂れていく。湾岸諸国が力を失えば、米国経済も大きく傷つく。
湾岸諸国が米国への投資を支える
相互関税に関する日米間の議論の結果、日本政府は米国に80兆円を超える投資の実行を約束した。巨額の投資だが、湾岸諸国が約束した投資額はこれよりも大きい。
ホワイトハウスの資料によると、米国への最大の投資国は、UAE。投資額は1兆4000億ドル(220兆円)だ。投資先は、航空宇宙、エネルギーなどだ。第2位はカタール1兆2000億ドル(190兆円)。サウジアラビアも6000億ドル(95兆円)だ。湾岸諸国の米国への貢献は大きい。ちなみに日本の投資額も1兆ドルとされている。表-2が上位の投資国、企業を示している。
戦争で設備に損傷を受けた湾岸諸国は石油と天然ガス収入の一部も失う。きらびやかな中東の都市を舞台にした金融取引も投資も、水も電気もなければ失速する。
湾岸諸国での投資も不透明になる。湾岸諸国で計画されている大規模データセンターは建設されるのだろうか。
地政学上のリスクに加えデータセンターに必須の電気と水の供給リスクも顕在化した。湾岸諸国の経済成長が不透明になれば、米国への投資の行方も見えてこない。
米国にこれだけ大きなリスクをもたらす可能性があるイランのインフラへの攻撃が実行されるとは思えないが、何を考えているか分からない、気まぐれに発言が変わるトランプが米国の大統領だ。
思慮深く米国と中東諸国の経済的な関係に思いを巡らし決断することを期待したいが、トランプ大統領の考えを推しはかることはできない。世界を泥沼に引っ張りこむことがないことを祈りたい。

