2025年12月25日(木)

未来を拓く貧困対策

2025年12月25日

「体調が悪くなっても自己責任」の同意書と現場の実情

 生活保護の現場では、食品ロス削減推進法が成立する前から、生活困窮者に対して災害備蓄品などの食料品を提供する取り組みが行われてきた。全国一律のルールがあるわけでもなく、一部の自治体を除いて予算措置が行われていた訳でもない。必要数を見積もり、議会に予算を要求して備蓄品を購入する防災担当課とは事情が異なる。

 多くの自治体では、災害備蓄品が入れ替えなどのタイミングで不要になった場合に、それを譲り受けて保管し、何らかの事情で生活保護の申請に至らなかった者、保護申請から決定までの間に手持金がない者、受け取った生活保護費を使い切ってしまい食事に事欠く者などに手渡してきた。

 部署間の力関係の中で、どうしても「いただく側」の立場は弱い。賞味期限ぎりぎりで入れ替えを行っている防災担当がいたとして、「生活困窮者のために、少し期限を残して提供してほしい」とはなかなか言えないだろう。

問題は食品の確保だけではない。

 現場の悩みとして吐露されるのは、渡した生活保護費を短期間で使い切り、「なくした」「盗られた」と主張して助けを求める生活保護の利用者である。もちろん、やむにやまれぬ事情で保護費を使い切ってしまった人もいる。薬物やアルコールなどの依存症、知的障害などの特性の影響がある人もいる。しかし、「もう少し何とかならないか」「あまりに無計画ではないか」と感じられる人もいる。

同意書
私は、徳島市から食料の支援を受けるにあたり、以下のことに同意します。
1. 支給される食料が賞味期限切れであることを理解しています。
2. 支給された食料の飲食によって体調が悪くなった場合、自己責任であることを理解しています。
3. 食料の支給は、今回限りであることを理解し、今後の適切な金銭管理の徹底に努めます。
出所:報道内容から筆者転記。原文はフリガナあり。

 そうした経験をもとに同意書を見ていく時に、目に留まるのは3番目の制約事項である。「何度も渡せるものではないから」「私たちにもできることとできないことがあるから」。筆者には、そう何度も念押しをして、食品を手渡す担当者の姿が目に浮かぶのである。


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