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2017年10月18日

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金子熊夫 (かねこ・くまお)

外交評論家・エネルギー戦略研究会会長

外交評論家。元外交官、外務省初代原子力課長、元東海大学教授。退官後エネルギー戦略研究会(通称EEE会議)を創設し、会長として現在も活躍中。主な著書は「日本の核 アジアの核」(朝日新聞社刊)、「小池・小泉『脱原発』のウソ」(飛鳥新社、11月6日発売)など。1937年愛知県生まれ。ハーバード大学法科大学院卒。

 第48回衆議院総選挙投票日まであと数日。選挙戦の終盤になっても各党の選挙公約は曖昧で、争点もはっきりしないが、その中で気になるのは、やはり小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」の政策である。特に原発政策については、「2030年までに原発ゼロ」を打ち出し、さらにご丁寧に、「政権交代が起きても原発ゼロが変わらぬように、このことを憲法に明記する」とまで言っているものの、そのための具体的な「工程表」は未だに提示されておらず、いかにも泥縄式の観を否めない。

(vencavolrab/iStock)

 これまで、旧民主党が与党時代に「2030年代ゼロ」を唱えながら、党内の意見を集約できず、正式の政策として成立させることに失敗している。今回、寄せ集めの「希望の党」で本格的に政策化できるとはとても考えられない。そもそも小池氏自身、自民党議員時代に環境、防衛大臣を務め、熱心な原発推進派であったはず。今後いかに政治家として政策の整合性を維持し、筋を通すか、通さないか、厳しく監視する必要がある。

 ところで、もう一人、陰の要注意人物がいる。かねてから「即時原発ゼロ」を絶叫して全国を奔走している小泉純一郎元首相である。彼は「原発ゼロを総選挙の争点にすれば必ず自民党を潰せる」と豪語しており、今回の総選挙でもしきりに小池氏を裏で煽っているようだ。反自民、反安倍で野合した感のある「小池・小泉コンビ」が、果たして、どこまで一般国民の支持を獲得するか、予測の限りではないが、「劇場型政治」手法に長けた両人だけに、いささか気がかりではある。

 とくに小泉氏について言えば、彼の意見の中で最も納得できないのは、原子力の致命的な欠点として、高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の永久処分場を見つけられないことを挙げて、原発は所詮「トイレ無きマンション」だからダメだ、だから原発を直ちにゼロにせよと言っている点だ。おそらく氏は原発を潰すことだけが目的で、後は野となれ山となれ、日本の長期的なエネルギー問題には全く関心がないのかもしれない。

原発問題を政争の具にする勿れ

 しかし、いやしくも3.11の4年半前まで日本の最高責任者であった人であるから、もっと責任ある発言をしてもらわねば困る。失礼ながら、エネルギー問題は氏が得意とする「ワンフレーズ」でカバーできるほど単純なものではないし、氏の業績とされる郵政民営化などとは全く次元の違う重要な問題である。ましてや、一国の長期的なエネルギー政策は、国家百年の命運にかかわる大問題であり、一度や二度の総選挙の争点で終わるテーマではなく、そもそも目先の政争の具にすべきでは断じてない。

 小泉氏の「原発ゼロ」論のどこがどう間違っているかは、筆者が近く出版する本『小池・小泉「脱原発」のウソ』(飛鳥新社刊、11月6日発売予定)の中で詳しく述べてあるので、ここでは詳述を避けるが、今ここで一点だけ、高レベル放射性廃棄物の最終処分問題について言えば、同氏が自ら視察した北欧のフィンランドのような地形や地質に恵まれない日本でも、十万年以上安全に廃棄することは技術的に十分可能であり、その面の技術開発は日本もすでに高いレベルに達している。この問題の直接の担当機関である経済産業省・資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)は、長年の調査研究の実績を基に、今夏「科学的特性マップ」を公表し、目下全国各地で説明会を開催している。

 ただ、現在のところ、高レベル放射性廃棄物の最終処分についての理解がまだ十分進んでおらず、他方で反原発派による執拗な宣伝や誤情報のせいで一般市民の支持がなかなか得られていないのが現状である。

 しかし、この問題は、時間をかけて丁寧に説明していけば、そして、欧米など世界各国での実績が積み重なっていけば、必ずや早晩解決すると考えられる。当然ながら政府や電力会社など当事者は、もっと柔軟な発想と創意工夫により一般市民が理解しやすい説明をする必要がある。

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