海野素央の Love Trumps Hate

2017年10月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプ支持者とトランプ政権」です。9月中旬、筆者は米国中西部ミネソタ州セントポールでトランプ支持者を対象に、彼らがどのようにトランプ政権をみているのかを明らかにするために、現地ヒアリング調査を実施しました。さらに、南部バージニア州アナンデールにおいて地元の選挙事務所でジェリー・コノリー下院議員(民主党)にヒアリングを行いました。本稿では、トランプ支持者及びコノリー議員の生の声を紹介します。そのうえで、スティーブン・バノン元首席戦略官兼大統領上級顧問の2018年中間選挙における戦い方について考えてみます。

(Justin Sullivan/gettyimages)

 「沼の水を抜け!」

 米FOXニュースの保守系コメンテーターの広報担当を務めている白人女性A氏(59)は、トランプ大統領を熱狂的に支持しています。まず、彼女は更迭されたバノン氏について率直に意見を述べました。

 「バノンが政権から離れたことに不満があります。ただ彼は、アウトサイダーの立場からクシュナー(大統領上級顧問)と闘ってくれるでしょう。穏健派やエリート層は、ワシントンのルールを作りました。彼らは『沼』の一部です」

 トランプ大統領にアイデンティティを持っているA 氏は、大統領の娘婿で穏健派のジャレット・クシュナー大統領上級顧問は「沼」の一部であると、痛烈に批判しました。2016年米大統領選挙でトランプ候補(当時)はワシントンを標的にして「沼の水を抜け!」と支持者に訴えました。「米国を再び偉大な国に取り戻す」と同様に、このスローガンも支持者の心を捉えたのです。トランプ支持者によりますと、「沼の水を抜け!」には複数の意味が含まれています。

 第1に、ワシントンのエスタブリッシュメント(既存の支配層)を排除するという意味です。具体的に言えば、腐敗している職業政治家を選挙で落とすということになります。特に、共和党穏健派の議員に焦点を当てています。2018年米中間選挙の共和党予備選挙でバノン氏と彼を信奉するバノン軍団が、ワシントンの共和党穏健派議員を狙って「沼の水を抜く」選挙運動を行うことは間違いありません。

 第2に、行政機構で働く職員数を減らすという意味があります。肥大化した「行政機構の解体」を目指すバノン氏の影響を受けているのです。

 第3に、第2と関係があるのですが、無駄なコストを削減するという意味です。トム・プライス厚生長官は国内出張の際、民間機ないし列車を使用せずにプライベートジェット機をチャーターして、多額の公費を使い込んだと非難されました。これに関して、トランプ大統領はプライス長官の行動に強い不満を漏らしたのです。その理由は、同長官が「沼の水を抜け!」と相反する行動をとったからです。同大統領は、支持基盤を意識して「沼の水を抜く」公約を守る態度を示しました。

日本人とトランプ支持者の相性

 A氏は続けて、彼女の両親と移民政策について語りました。

 「私の両親はオーストリアとドイツからの移民です。彼らは一生懸命働いて地位を獲得しました。しかし、今の移民は生活保護を受けています。私には大学に通っている子供が3人います。授業料が高くてとても大変です。にもかかわらず、私たちは移民の生活を支えています。中間層が搾取されています。私はトランプのメッセージに共感しています。米国は法と秩序、国境警備、公平な貿易の取引が必要です。トランプは中間層に語りかけているのです。彼は私たちの生活を向上させようとしているのです」

 一言で言えば、A氏は「現行の移民制度は中間層にとって不公平だ」と言いたいのです。前回の米大統領選挙で筆者は、研究の一環としてクリントン陣営に入り、激戦州で戸別訪問を実施した際、トランプ候補(当時)を熱狂的に支持するトランプ信者に直面しました。彼らは、移民に対して強い不公平感を抱いていましたが、選挙後もその気持ちには変化が生じていませんでした。

 A氏は、移民政策に対して強硬派でした。彼女は、幼少期に親に連れられて不法入国をした「ドリーマー」と呼ばれる若者の移民に対する一時的滞在資格を与えるDACA(ダカ)プログラムに対して、不快感を示していました。2012年米大統領選挙の最中に、バラク・オバマ前大統領が、ヒスパニック系(中南米系)の票の獲得のために大統領令を使って発令したのがDACAであると言われています。

 「私はDACAに反対です。米国の伝統を守ることが重要だからです」

 こう語るとA氏は、ソマリア人を例に挙げて彼らを非難し始めました。

 「ソマリアからの不法移民は、米国の文化に同化しません。彼らは自分たちのルールで行動するのです。ソマリア人は米国のやり方に従うべきです。トランプは、不法移民から米国の伝統を守ろうとしています」

 A氏はこう主張すると、突然日本について言及したのです。

 「日本人は移民を嫌い、伝統を大切にします。トランプ支持者と共通点があります。きっとトランプ支持者と日本人はうまくやっていけます」

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