家電口論

2017年11月2日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

新しい世界へ進むためには「眼を持った人」が必要では?

 「テレビの分野で新しいことはできないのか?」というと、私はそうは思わない。が、人間、今の延長線上で考えるのが常で、なかなか新しいことに気づきにくいのは事実だ。

 新しい世界を創出した製品にソニーの「ウォークマン」が上げられる。再生のみの携帯型デッキに、ヘッドフォンを組み合わせた、今では標準のオーディオ機器だ。しかし、当時有識者はこれを面白いとは思わなかった。「録音ができない半端モノ」のような言い方をしていたはずだ(私は、そう記憶している)。 しかし、世間的に見るとラジカセを路上に置き、みんなで踊るような竹の子族が出ているような時代。「どこでも音楽!」というニーズは、若者を中心に世界を席巻、造語である「WALKMAN」が、英国の権威ある辞書 ウェブスターに採用された程だ。

 しかし考えて欲しい。当時ラジカセを路上で使い、踊る文化があることは全メーカーが知っていたのに、音楽を外に持ち出す「ウォークマン」を発想できたのが、ソニーだけだった。それはソニーに「眼を持った人」がいたからだ。また、そのアイディアを検討する余裕が社内にあったからだ。

 日本の商品は確かに高品質だし、高性能だ。ミクロ的な見方をすると新しいことに挑戦もしている。しかしLGのような「有機EL」をトコトン活かしたものではなく、「平面テレビ」の誰でも予想される進化をしているだけであるとも言える。もしLGが壁掛け以上のアイディアを出してきたら、品質リファインだけでプレミアム維持は厳しい。

 メーカー創業者は、自分の欲しいモノ、必要に思えるモノが世の中にないから、作ろうと思ったわけで「眼を持った人」だったわけだ。しかし、今の世、特に大メーカーは、自分の組織を維持すること、計画通りのモノを作り利益を上げることに集中しようとしている。しかも計画通りのモノは、自らが考えたモノではなく、借りてきたアイディアであることも多い。

 今回、今の時点で「品質に優れ、いいな」と思える日本メーカーだが、「新しいな、いいな」と思えるLGのポテンシャルは高い。品質向上に依然大きな投資をしている日本だが、技術はこなれてくると、品質差は薄まる性質を持つ。そうなった時、ユーザーはプレミアムとして日本メーカーにお金を払ってくれるだろうか?

  
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