WEDGE REPORT

2010年10月29日

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日本が輸入のほぼ全量を中国に依存していたレアアースで起きた「実質輸出停止」は、チャイナリスクを顕在化させた。日中貿易について見てみると、このように中国依存度が高い産業分野として、衣料品が挙げられる。その衣料品メーカーの、チャイナリスクへの耐久度を探った。

 「2~3年前から、中国以外での生産比率を、現状の2倍の『3分の1』以上に引き上げる目標を掲げています」。

 こう語るのは、ファーストリテイリングの広報担当者。同社主力のユニクロは、2010年8月の売上が前年比18.9%増の8148億1100万円、9月の売上は残暑の影響などで前年比79.1%と落ち込んだものの、この業界で数少ない活気ある企業であることは間違いない。そんな同社は、上記のように、生産の90%を占めていた中国から、東南アジア諸国への生産拠点の移転を進めており、現在中国の生産は85%と、僅かながらではあるが数値は下がりつつある。

 日本貿易振興機構(JETRO)によると、2009年輸入品目別国別表・繊維製品では79.8%を中国が占めている。今や私たちが着ている服のほとんどに「Made in China」のタグがついていて、日本のアパレル産業にとって中国が不可欠な存在であることは誰の目にも明らかであろう。では、繊維製品はなぜここまで中国で作られるようになったのだろうか。

「中国の技術力はすばらしい」

 繊維製品が出来上がる工程を簡潔に説明すると、綿・麻・羊毛などの天然繊維や、ポリエステル・ナイロン・アクリルなどの化学繊維から糸を作り、糸から織・編物ができ、それを縫製して繊維製品の完成となる。原料から糸の部分を「川上」、織や編の部分を「川中」、縫製の部分を「川下」と業界では一般的に呼んでおり、中国に依存しているのは主に「川下」に当たる縫製の部分である。ちなみに織・編物自体は、日本から持ち出す場合や現地や他国で調達するなど多様な経路があり、最近では中国国内で「川中」部分まで取り扱う工場もあるそうだ。

 「中国の縫製工場の労働者の技術はすばらしい」。

 アパレルメーカーや小売業者、商社などは、口をそろえてこう言う。あるメーカーの担当者は、「スーツの肩のラインや、婦人服のウエストラインをきれいに縫うことは非常に難しい。こういった製品の、日本が求める高度な要求をクリアできるのは、今のところまだ中国だけではないか」と、中国の技術の高さを賞賛する。意外に感じられるかもしれないが、「コツコツ行う縫製という作業と勤勉な国民性が合っているのかもしれない」(同)ということで、高い技術力を身に付け、成功を収めてきた。

「ミシンで縫う人」と
「布を引っ張る人」が必要?

 この高い技術力に加えて、もう一点非常に重要となる条件が「人件費」である。「衣料品の縫製に必要なのは、少し乱暴な言い方かもしれないが基本的にはミシンのみ。つまり他の工業製品を生産する場合よりも設備投資が低く済むので、その分全コストの中で『労務費』の占める割合が高い」(繊維メーカー関係者)のだ。日本の繊維製品を中国で縫製し始めたのは、1990年代頃からであり、それまでは主に台湾と韓国が拠点の中心となっていた。しかし、経済の発展とともに人件費が高騰し、企業は徐々に拠点を中国へと移していったのだ。それでもやはり、経済の発展とともに中国も同じ道を辿り、現在では上海地域の最低賃金が米ドルで302ドルまで上昇し、90年代の約5倍にまで膨れ上がった。

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