チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年12月1日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 「世界中のほとんどの国は、経済報復を気にして中国の言うことを聞くようになった。今や中国より強い国は北朝鮮くらいでしょう。中国も北朝鮮にだけは頭が上がらないですからね」――。

 西側事情に通じる中国共産党関係者は、皮肉を込めてこう話す。

 共産党機関紙『人民日報』ネット版『人民網』の掲示板「強国論壇」にも「今の朝鮮と中国、どちらがより強大なのか」と書き込みがあったほどだ。

中国異質論が高まるなかで起こった韓国・延坪島砲撃

 尖閣諸島・南シナ海の海洋権益問題、民主活動家・劉暁波のノーベル平和賞受賞などで自国の論理と価値観を押し通す強圧的な外交を展開、国際社会で「中国異質論」「中国脅威論」が高まった。しかし11月23日の北朝鮮による韓国・延坪島砲撃を受け、こうした批判は一転、中国に北朝鮮への影響力行使を求める「責任ある大国」論に転化した。

 12月10日にオスロで開かれる平和賞授賞式に各国大使らが出席しないような圧力を掛けるような国に対し、国際社会が期待すること自体、実に奇妙なロジックだが、北朝鮮の顔色をうかがうことができるのは中国くらいだから仕方ない。実は「危機を好機」に転換する外交を得意とする中国にとって今回の北朝鮮危機はチャンスとも言える。

 だからこそ米韓が黄海で合同軍事演習を始めた11月28日、中国外務省はわざわざ「重要情報」発表と銘打つ異例の記者会見事前予告を行った上で、会見では武大偉・朝鮮半島問題特別代表が、北京で12月上旬に6カ国協議首席代表による緊急会合を開くよう提案したのである。

国際社会に向けてAPECで発した胡主席のメッセージ

 尖閣問題で揺れた日中関係修復の舞台として国際社会の注目を浴びた横浜APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議。菅直人首相との会談で中国国内向けに強張った表情を崩さなかった胡錦濤国家主席が、横浜の日程で最も緊張したのが実は、APECと並行して行われたCEOサミットでの演説だった。

 「胡主席が菅首相との会談に応じたのは、中日関係改善に前向きな姿勢を示す、という主席の決断だった」と明かした中国政府幹部はこう漏らす。

 「CEOサミットの会場には1000人の聴衆がいる。人が多い。主席との距離が近い。パスを持っていれば誰でも入れる。テロはなくても、反中的・政治的な発言を浴びせられる危険はあった。一時は中止しようかと思ったほどだ」。

 しかし胡主席は、日中首脳会談より、むしろCEOサミットを重視していた。「なぜなら国際社会にメッセージを投げ掛けなければならなかったからだ」(前出・中国政府幹部)。

 演説で胡主席は、人民元問題、気候変動などで中国の立場を表明し、世界経済の持続的発展のため「中国は責任ある態度で国際ルールづくりに参加する」と訴えた。明らかに国際社会の中国「異質論」「脅威論」を意識した発言を繰り返した。

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