西側の憎まれっ子になると、次の瞬間、北京の覚えがめでたくなるというのが昨今ほぼ定着したパターンだ。
好例がフィジーである。ニュージーランドの真北、豪州ケアンズの真東に浮かぶ南洋の島国は、2006年に軍事クーデターを起こした。
中国から投資家集団
南太平洋の島国で何を
政権を奪取したのは、時折見る写真の姿がいつも軍服にベレー帽、いかにも軍人然とした提督フランク・バイニマラマ首相で、この人は今や南太平洋版チャベス(ベネズエラ大統領、反米で有名)みたいな存在である。
フィジー国旗には、今もユニオンジャックがあしらわれている。しかし英連邦は09年9月、民主化への動きが鈍いとしてフィジーの連邦加盟資格を停止した。提督は反発からであろう、今や「豪州、ニュージーランド、米国との因縁は切ってよい。中国の方がよほど大事だ」と公言する。今夏中国に長逗留した時の発言だ。
提督が大事だと言う対中関係が、この頃とみに軍事色を帯びつつある。
地元紙が今年8月半ば伝えた提督の話によると、フィジー軍から毎年数名が訪中し、中国人民解放軍の訓練を受けている。また中国政府はこのほど、フィジー軍工兵部隊のため500万米ドルの無償援助を与えた。広い太平洋の真ん中に、将校の訓練を中国軍に委ねる国が出現したわけである。
今年は既に2度、中国から投資家の一団がフィジー視察に訪れた。ホテルやセメント工場のほか「港湾と造船施設」を建てる意向を示したという。
どんな投資家か素性は不詳だが、観光立国のフィジーは空路に依存する国だから、港湾はさほど重要でない。
中国海軍潜水艦などが将来寄港し、補給や補修をするためと想定すると、「港湾と造船施設」の意味合いが重大に見えてくる。ちなみにあの辺り、旧日本海軍がよく知っていたように、ハワイから豪州につながる海路を押さえるには絶好のロケーションである。
パプアニューギニア
コバルト精錬が訴訟沙汰に
目をやや西に動かしニューギニア(パプアニューギニア、PNG)へ行くと、そこはもちろん投入された日本軍将兵16万人のうち、残存者わずかに1万余りという太平洋戦争の激戦地だ。北岸に面す町マダンは、派遣軍が前線補給基地を置いた場所である。
そこがこの数年来、中国による大規模投資の目的地となっている。近くの山から鉱石を採掘、134キロメートルのパイプを通して海岸沿いの工場へ運んだ後、ニッケル、コバルトに精錬するという一大プロジェクトが、中国企業の手によって進められてきた。
主力をなすのは国有の中国冶金科工集団有限公司。アフガニスタンでは銅鉱を手がけ、国家戦略を担う企業だ。これにニッケル、コバルト、プラチナの生産で中国最大の金川集団有限公司などが組み、「ラム・ニッケル&コバルト」、略してラムニコと呼ばれる現地採掘企業体の株式85%を保有している。
これが何かと問題含みなのだ。