幼保一体化
既存の枠組みで工夫できる

横浜市・初音丘幼稚園 渡邉真一園長に聞く


WEDGE Infinity編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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民主党が2013年度からの導入を目指す幼稚園・保育所を一体化した「こども園」(仮称)について、政府の「子ども・子育て新システム検討会議」のワーキングチームで議論が行われてきたが、あまりに性急に進める政府に現場は猛反発。12月に2度開かれた同会議でも、着地点が定まらない状態だ。少子化問題を解決するために、幼稚園と保育所は、社会にとってどのような在り方がベストなのか。すでに横浜市で、幼稚園と保育施設を一体で経営する渡邉真一氏に聞いた。

――民主党が進める「幼保一体化」に対して現場からの反発が大変大きいようですが、なぜなのでしょうか。

 渡邉真一園長(以下渡邉園長):あまりに議論が拙速過ぎるからではないでしょうか。もともと、幼稚園・保育所はそれぞれ歴史も目的も異なるもの。それを、十分な議論も財源もないまま、「幼稚園は定員割れしていて、保育所は(子どもが)溢れているなら、一緒にしてしまえばいい」という考え方は乱暴でしょう。幼保一体化は、少子化対策・待機児童対策として、働く親御さんたちのために子育てを支援するだけでなく、専業主婦であっても、子育てに不安を抱いている人たちに手を差し伸べる、という目的で進められるべきと私は認識しているのですが、現場から見るとどうも現実からかけ離れた方向へ行ってしまっている。

 幼保の役割については、それぞれの歴史を見れば明らかですが、幼稚園では就学前の幼児教育、保育所では「保育に欠ける」子どもへの支援が根本にある、ということです。今回の一体化構想に強い反発が出てきたのは、幼稚園・保育所がそれぞれの役割に自負をもってやってきたところに、「これからは(幼保が)一緒になります」と言われて抵抗を感じているからでしょう。

 特に幼稚園からの反対が大きいのですが、これは、こども園(仮称)に統合されることによって保育に割く時間が増え、教育に力が入れられなくなるのでは、という懸念があるからです。また、0~2歳児の保育という未知の経験に対する不安もあると思います。保育所側にも、株式会社などの多様な参入者によって、パイの奪い合いにならないか、それらが過当競争を引き起こし、利益追求のため保育の質の低下が起こらないか、という声があります。

見えない「こども園」の中身

 そしてこの幼保一体化、まだまだ先行きが不透明です。政府のワーキングチームは、現在、幼保一体化の構想として5つの案を挙げていますが、構成員の中でも意見が割れています。さらに、これも現場や保護者が反発・混乱する一因と思われますが、「こども園」の仕組みが見えてこない。イメージとしては、今ある「認定こども園」の形になるのでしょうか。しかし、先生の人員確保、給食室の設置義務、保育料金システムなど、様々な基準について、どのような対応となるのか現段階では決めきれていません。開設側からすると、こども園は認定こども園よりも、手続きや事務管理などの煩雑さが解消されるというメリットがありそうですが、それらは外からは見えにくいこと。一般的に幼保一体化の意義が理解されづらいのです。

――「認定こども園」ですが、そのような事務手続きの煩雑さもあり、今年の4月時点で全国に約500件の設置にとどまっています。「こども園」がより設置しやすいものであるならば、待機児童問題を解消できるのでしょうか。

 どちらにしても、5案の中で、いきなり1案(幼稚園と保育所をすべてこども園に一本化する)という形を選択するのは不可能でしょう。そうすると、こども園を作っても、まずは既存の幼稚園・保育所は残る可能性が高いのではないでしょうか。

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