東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年12月29日

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浜野保樹 (はまの・やすき)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

* 第1回「メガヒット「踊る大捜査線」が日本映画を変えた」から読む方はこちら

映画とテレビのシナジーを収益に結びつける

浜野保樹(東京大学大学院・新領域創成科学研究科教授) テレビ局が手掛けた初の映画ってことで、しかも大当たりして、面白いエピソード満載なんでしょうけど、いまの亀山さんがやってる映画は、もはや穴埋めでもなんでもなくて、収益の柱になっている。当てなきゃいけない。これは大変でしょう。

亀山千広(フジテレビジョン取締役、映画事業局長) はぁ。しんどい。

 テレビ局の収入に、放送外収入というカテゴリーがありまして、イベントだったり、デジタルコンテンツを活用したものだったり、いろいろあるんですけど、テレビと映画のシナジー性は極めてわかりやすい。

 もともとそうだったところへもってきて、「踊る」以来、計算ができる収益部門ということになってしまったやむを得ない流れですよ(笑)。

 いまは最低限、これだけは、っていうボトムラインを前提にしてやらなければならない。

 まぁ、ドラマで鍛えてもらってはいますが。ドラマもこけたら廊下の真ん中は歩けなかったりするんで(笑)。会社の中でも、なるべく声掛けられないようにしようと思ったり…。

亀山千広氏(左)「収益をあげれば、次の映画のボトムラインは当然高いところに設定される。前年を超えるのが当たり前、というのがビジネスの常でしょう?(笑)」。浜野保樹教授「大変だねえ(笑)」

浜野 そもそも映画ってイベントの特性が強い。その証拠に、ある時期に特定してこれだけ宣伝広告費を集中してうつものなんて、映画以外にありません。

 ハリウッドだったら、映画の平均広告費は1本当たり30億円。大作になると世界中で広告をやるわけです。

 当たればそのあと関連商品、関連広告、ノベライゼーション、観光、っていうように、ずーっとひとつのパッケージのブランドになり、利益の源泉になっていく。

 その意味で、集中的に広告費を投下して世の中になかったパッケージを打ち出していくために、映画はとても面白いビーイクル(vehicle)、仕掛けだと思っているんです。映画とは広告の手段である、とすら言えるのではないか。

 映画のまさしくそういう性質を強く思わせてくれたのが、僕はやはり「踊る」だったと位置づけている。

亀山 「南極物語」とか「子猫物語」の成功を、スタッフの使い走りとして見ていたことは、テレビ局の映画を成功させるコツのようなものを知るのに良かったとは言えるかもしれません。

 テレビと映画にはシナジーがあるって言いましたけど、後でテレビにかけられるように作れば倍の収益機会が得られるわけでしょう。「この後テレビで」を意識してつくるという作り方は、おそらくそれまでなかったものだと思いますね。

 おまけにテレビで育った作り手には、絵の撮り方にそれまでないものもあった。

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