ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年1月15日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

*前篇から読む方はこちら。

 米韓関係、日韓関係に話を移すと、米国にとって最初の課題はやはり、米韓FTA(自由貿易協定)をいかに迅速に完了できるか、だ。今求められているのは文書の翻訳と両言語での法的な「すりあわせ」(確認と統一)で、それが終わって初めて、12月初旬にまとまった合意が承認を得るために議会に送られる。

米韓FTA、批准発効に順調

 良い知らせは、米韓FTAは今も、いかなる修正からも守られているということだ。というのは、最初の合意が「ファストトラック」(貿易問題などに関して大統領が一括して交渉する権限)による保護がまだ有効だった時に正式調印されたため、米韓FTAは修正なしで厳密に「イエスかノー」の採択にかけられるからだ。

 一方、悪い知らせは、米議会の多くの議員にとって、米韓FTAに関連した「牛肉」絡みの政治問題が残っているということだ。実際、ソウルで開催されたG20の機会に米韓FTAが意外にも最終合意に至らなかった原因は牛肉問題だった。

 それでも大方の貿易問題の専門家が同意するのは、昨年11月の中間選挙の結果、共和党が下院の過半数を押さえたことによってひとついいことがあるとするなら、極めて重要な下院歳入委員会は、既に米韓FTAを熱心に支持する議員が運営することになる、という点だ(議論が長らく行き詰っているコロンビアおよびパナマとのFTAについても同様だ)。

 過度に楽観的なワシントンのアナリストは、米韓FTAがついに議会の承認を得られれば、日本政府の政治的な「行き詰まり」を打破する助けになり、菅政権がTPPに全面参加できるようになると考えるかもしれないと思っている。読者の皆さんならどう思うだろうか?

残る問題・北朝鮮をどうする

 しかし、現状では圧倒的な事実であり、今後数カ月間続く可能性が高いのは、日米両国が韓国を1つのプリズムを通して見るということだ。北朝鮮との公式交渉の再開の余地を生む、あるいは正当化する、あるいは理屈づける(どの言葉を使うかは、皆さんに選んでもらおう)どのような合意をまとめられるか、というプリズムである。

 この1年以上、米国の政策は明白に、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と「結びついて」いた。オバマ大統領は就任時から、それまで15年近く続いたような米韓両国の政策の不調和を二度と生まないことを決意していた。

 それは無理からぬことであり、今の状況下では正しいことだろうが、ここ数カ月間はそれが「戦略的な放置」につながってきた。戦略的な放置とは、日本にとっても米国にとっても本当に重要な事柄について北朝鮮と交渉する努力をしないことだ。具体的に言えば、ミサイルと核兵器を完成させる北朝鮮の努力を抑制する試みである。

 この難題は今も残っており、米国と日本、韓国、中国が互いに考えを一致させ、過去の約束を反故にすることに対して北朝鮮に「報いる」ことなく、しかも北朝鮮に韓国に対する態度を改めさせて交渉を再開できるような方法を見いだせない限りは、今後も続く可能性が高い。

 もしかしたら、来月のWEDGE Infinityのコラムを書くまでに、事態の進展があるかもしれないが。

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