田部康喜のTV読本

2018年3月28日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

吉田所長を再現ドラマで演じた大杉漣の言葉

 運命の2日間で、放射性物質の大量放出の分岐点になったのは、電源復旧作業も大きく影響した。原発に近い中央制御室は電源を喪失して、各種の計器が止まった。

 バッテリーを利用して、まず立ち上げたのは、原子炉内の温度を測定する温度計ではなく、水位計だった。マニュアルでは、水位計をチェックしていれば、冷却状態が間接的にわかるという点から優先していた。その水位計が正確な水位を示していなかった。

 電源復旧のチームは、福島第一原子力発電所に到着していのに、東京の対策本部の指示で、まる2日間作業ができなかった。自衛隊や警視庁など、それぞれが応援体制をとるために、現地にさまざまな要請を行っていたこともあって、電源復旧チームの所内入りが遅れた。

 危機管理の専門家は、こうした関係各所との調整による事態の悪化を「調整コスト」と呼ぶ。あるひとつの部署に説明しても、別の部署に対して再び最初から説明しなければならない状況は、時間ばかりがとられて事態の悪化を招く。

 「調整コスト」は時間ばかりではない。関係各所の要請に応じて、現地の作業員たちは室外での作業に迫られた。被ばく線量は刻々と上昇する。テレビ会議の吉田所長を再現ドラマで演じた、大杉漣の言葉が胸に響く。

 「部下たちに高線量をもうこれ以上浴びせられませんよ。死んでしまう。本店さんどうにかしてもらえませんか」
 

  
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