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2018年4月25日

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小野悠史 (おのゆうし)

ライター

不動産ニュースライター。業界紙を経て現職。不動産・住宅業界を中心に幅広く取材。不動産・住宅を経済、社会、生活、トレンド、テクノロジーなど視点から見ている。

 引っ越しシーズンも終わり、この春、入学や就職などに向けて部屋探しをした人も多いだろう。かつては、不動産情報誌などを参考に部屋探しを始めたものだが、いまでは不動産検索サイトや不動産会社のホームページなどインターネットで探し始めるのが一般的だ。紙幅に限りのある紙メディアに比べて、サイトには物件をいくら掲載しても問題がない。

 例えば、ある不動産検索サイトで「東京都中央区」と「家賃10万円を上限」にして、調べてみると5000件以上の不動産情報がでてくる。実際の部屋探しでは、この中から、細かな条件を絞り込んで探すのだ。不動産検索サイトのおかげで不動産情報量は圧倒的に多くなった。

(SvetaZi/iStock)

紛れ込む「おとり広告」

 予算や好みにあった物件をスマホやパソコンで見つけ、不動産会社にメールや電話で問い合わせる。

 と、ここで問題になるのが「おとり物件」だ。

 部屋探しをしたことがあるならば、問い合わせた物件に「すでに入居が決まってしまいました」と不動産仲介会社のスタッフに言われたことは、一度はあるのではないだろうか。元々は業界用語だったおとり物件という言葉も、いまではすっかり有名になった。

 このおとり物件広告を見つけるサービスで注目されているのが、不動産テックベンチャーであるターミナル(東京・港)だ。同社の「trueper(トゥルーパー)」は膨大な不動産データを使い、検索サイトに載った物件の最新情報を調べるものだ。もし入居が決まっていたり、入居中だったりする「おとり物件広告」であるとわかれば、サイト上に表示できなくなる。

 元々、おとり広告は、入居が決まった物件の「落とし忘れ」が多いと言われている。ポータルサイトや自社ホームページに掲載した後に入居が決まったが、更新作業が間に合わずにさらに問い合わせがきてしまうことだ。

 インターネットでの不動産探しが世間一般まで定着したことで、不動産仲介会社の集客戦略はサイトへの物件広告掲載が主軸になっている。サイトに掲載する物件数が莫大に増えたため更新作業が追いつかないのだ。

 落とし忘れが増えれば、ユーザーも不動産を探しにくくなり、検索サイトの信用性にも関わる。そのためサイト運営会社では、罰則を設けて厳しく取り締まっている。警告などに従わない場合は、掲載停止に踏み切る場合もある。昨年には首都圏不動産公正取引協議会からの要請を受け、特に悪質とされた不動産会社42社の物件を掲載停止にした。

 しかし、「更新作業が追いつかない」という不動産仲介会社は多く、サイト運営各社の規定では掲載から1~2週間は落とし忘れがおきても罰則などは課さない方針だ。

 言うまでもないが、日本では入学や就職、転勤、転職など4月の新年度に合わせて部屋探しをする人が多い。特に賃貸物件では1~3月の間で、1年間で寄せられるうちの5割の問い合わせが集中するという。不動産会社からみれば一番の書き入れ時に当たり、来店客の対応に追われ、更新作業が後回しになってしまう。

 「それでは八百屋が腐った野菜を店頭に並べているようなものだ。言い訳にならない」と言う向きもあるだろう。しかし、不動産賃貸業界の仕組みを知れば、いたしかたない側面もある。

 ほとんどの賃貸住宅では家主、管理会社、仲介会社という3者が関連する。部屋探しをする入居者からの問い合わせを受けたり、部屋を案内したりするのは仲介会社だ。そして、ポータルサイトやホームページに物件情報を掲載するのも仲介会社が多い。

 新しい入居者を募集するときは、まず今の入居者から管理会社に退去するむねの連絡が入り、そこから仲介会社に伝わる。例えば「ABCマンションで201号の部屋が2月末で退去。3月15日から入居可能」などの、情報が管理会社から仲介会社に一斉に送られる。それを受け、各仲介会社が募集を代行する。そのうちの1社が次の入居者と契約をまとめても、すぐには他の仲介会社には情報が伝わらないため時間差が生じて、「落とし忘れ」が多発してしまう。小まめに管理会社に連絡を取ればよいが、「とても手が回らない」(都内仲介会社店長)のが現状だ。

 そこでターミナルが考えたのは管理会社が持つ最新の入居データを集めることだった。

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