WEDGE REPORT

2011年3月14日

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小松正之 (こまつ・まさゆき)

政策研究大学院大学教授

東北大学卒、エール大学経営学大学院修了(MBA取得)、東京大学農学博士号取得。 在イタリア大使館一等書記官を経て、水産庁漁業交渉官として捕鯨を担当。2000年から資源管理部参事官、2002年8月1日から2005年まで漁場資源課長。元国際捕鯨委員会(IWC)日本代表代理、元国連食糧農業機関(FAO)水産委員会議長、元インド洋マグロ漁業委員会日本代表。2005年4月から水産総合研究センターに理事(開発調査担当)として出向。2007年12月3日水産庁増殖推進部付。辞職。現在、政策研究大学院大学教授。著書に、『日本の食卓から魚が消える日』(日本経済新聞出版社)、『これから食えなくなる魚』(幻冬舎)など多数。2005年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。2010年行政刷新会議農林水産業地域振興WG委員(菅直人首相任命)

東京都議会の予算特別委員会では、築地市場豊洲移転経費約21億円を含む中央卸売市場会計予算案が8日に可決され、11日には本会議で採決された。しかし、肝心の移転先の構想はまだ見えていない。一刻も早く本質の議論を開始するべきと主張する理由を、水産業全般に詳しい小松正之氏に聞いた。

――長期に渡り議論が紛糾していた築地市場の移転問題ですが、そもそもなぜ移転すべきなのでしょうか。

小松正之教授(以下小松教授):築地市場はかつて世界屈指の卸売市場でしたが、今では「3D」、すなわち「Dirty(汚い)、 Dark(暗い)、 Daunty(気力をくじかれる)」と呼ばれています。1935年に日本橋から移転したので、当然老朽化も進んでいます。

 また、総敷地面積が23ヘクタールのうち水産施設が35000平方メートル、取り扱い水産物量が57万トンという、大変狭いスペースに魚がひしめき合っている状態です。しかし、水産施設がほぼ同じ広さのフランス・ランジス市場では、8.9万トンの水産物を扱っており、築地と比較するとスペースが6倍になります。築地はとても狭い。そのため物流がスムーズではありません。また、魚が購入者に届くまで、卸業者、中卸業者、配送業者などたくさんの人を経由しており、一般的な海外の市場の1.5倍のコストがかかると言われています。

 移転をせず、現状の築地市場に上層階を建設することに関しては、工事の間どのように営業するのかという問題が出てきます。晴海に一時移転という案もありましたが、結局同程度のスペースしかない晴海に仮の施設を作り、再び築地に戻るというのは時間とお金の無駄ではないでしょうか。また、海外の例を見てもそうなのですが、お客さんはあまり上層階に行かないという現実もあります。そうすると、現状地整備よりも新たな広い場所への計画的な移転の方が本質的な解決と言えるでしょう。

市場外流通はすでに40%

――それ以外にも、築地市場を取り巻く状況は大変厳しいと言われています。

小松教授:築地市場を通さない「市場外流通」が今や40%にまでのぼっています。小売店からスーパーマーケットの時代になり、独自の配送センターをもつスーパーは築地市場を通さずに水産物を輸送するようになりました。また、配送業者は羽田空港近辺に物流センターを設置し、自分たちで頼まれたところへ配達していることが多いのです。「なぜ(水産物を)築地にもってくるのか」という疑問に今後築地市場は答えられるでしょうか。競走相手もなく、輸入品もなかった時代は、そのままでも良かった。しかし、今やその環境が変わった中で、自分たちだけ変わらずにいられるはずがありません。

 海外を見ても、整備された中国の上海東方国際市場や韓国の露梁津市場、そしてフランスのランジス市場も世界の水産物の集荷に力を入れ、今でも買い負けが進んでいます。そして、これからますます外国の水産物需要が高まっていく中で、老朽化したコストの高い日本の築地市場が見向きもされなくなるのは避けられないでしょう。

――移転反対派の人々は、移転先である豊洲の土壌・地下水汚染を懸念しています。

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