“マザーマシン”と呼ばれ、日本のモノ作りの根幹を支える工作機械業界。月単位の受注動向をみると、2008年9月のリーマン・ショックを機にした世界同時不況の直撃をモロに受け、一時は200億円レベルまで急減したが、中国など新興国市場の立ち直りを受けて徐々に回復。今年2月の総受注額は前月比7・7%増。前年同月比73・9%増の1126億5300万円と、リーマン・ショックが発生した08年9月(1135億円)レベルまで回復した。好調な中国向けなど外需に加えて、内需も生産能力の整備を目指した一部メーカーからのスポット受注もあったことによるものだ。
こうした状況から工作機械メーカー各社は膨大な受注残を抱え、「フル操業状態が続いている」(中村健一・日本工作機械工業会会長)が、突然、襲ったのが3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。
日工会によると、震源地に近い東北・中越地域の主な生産工場19事業所のうち、「軽微なものを含めて工場の建屋の損壊などは6件」とそれほどの被害はなかったかのようだ。操業がストップしているのもスピンドルなど工作機械用部品を製造している中型施盤メーカー、ミヤノの福島工場など一部のようだ。
ただ、ようやく回復から上昇基調に転じてきた日本の工作機械業界にとってこの大地震は「一つの懸念材料」(稲葉善治・ファナック社長)となっている。個人消費には引き続き厳しいものがあるものの、輸出、国内生産の持ち直しなどを背景に足踏み状態を脱しつつあった景気に「水を差す恐れが出てきた」(中村会長)ためだ。
すでに工作機械にとって、最大の需要家である自動車業界は一部部品調達に対する懸念や寸断された物流網、電力、水道などインフラの破壊などによってトヨタ自動車が当面、16日まで操業を全面ストップするなどメーカー12社が何らかの操業停止に追い込まれている。