日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車COO)は17日の記者会見で、外国為替市場で17日、円相場が1ドル=76円台前半まで急騰したことについて「この時期に(円が急騰する)と思うと、言葉にもならない」と苦渋の表情を浮かべた。
この中で志賀会長は「私の経済学的な知識では、大災害が起こると一般的には通貨安に振れる。(メディアなどは)円高の理由として、大地震の復興資金などを必要としている企業が外貨建ての資金を円に替えていることなどを挙げているが、そんなことはないと思う。少なくとも日産ではそんなことはしないし、する計画もない」と強調した。
外為市場は円相場がこれまで最高値だった1995年4月の1ドル79円75銭をあっさり更新、大地震に加えての円高は自動車、電機などをはじめ、日本の輸出産業に打撃を与えることは必至。自動車産業は11年3月期の為替レートについてトヨタ自動車が1ドル=86円、日産自動車が1ドル=85・4円、ホンダが1ドル=85円と軒並み80円台半ばを想定している。為替変動が収益に与えるダメージは1ドル=1円の円高でトヨタが300億円、日産が180億円、ホンダが170億円といずれも営業利益の悪化となる。1ドル76円台では、トヨタはざっと3000億円の利益が吹っ飛ぶことになるわけで、今回の大地震に加えての急激な円高はリーマン・ショックの痛みからようやく立ち直りつつある自動車業界に打撃となりそうだ。
また、志賀会長は大地震でストップした操業再開への影響について「(中越地震など)これまでに比べて3つの大きな課題がある」ことを強調した。3つの課題とは、①輸送力の確保、②輪番停電による電力不足、③福島第1原子力発電所問題で、「民間では解決や予測が不可能」とし、本格的な操業再開までには相当な時間がかかる見通しを示唆した。
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