2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2011年3月23日

計画停電実施の理由

――3月14日から、東京電力管内で計画停電が実施されています。特に開始直後は、グループ分けの複雑さや、停電を実施するかどうかの情報が二転三転し、混乱していました。まず、なぜこのような電力不足に陥ってしまったのでしょうか。

横山明彦教授(以下横山教授):今回の震災で、福島原子力発電所の他に常陸那珂・広野・鹿島など、太平洋側の火力発電所が被害を受け、軒並み停止状態になってしまいました。これらの火力発電所の発電量の総量が約900万kWであり、まさに今実施されている計画停電は、原子力発電所の他に、これらの火力発電所でまかなわれていた分が不足しているため行われています。

――計画停電について、通常私たちに電気が供給されている仕組みと併せて教えてください。

横山明彦教授:端的に説明しますと、火力、原子力、水力などの発電所で作られた電気は電圧を高くして送られ、その電圧を変電所で下げる必要があります。各発電所から500kvで送られた電気は、まず超高圧変電所で275kvに下げられ、次の一次変電所で66kv、そして次に配電用変電所で6.6kvまで下げられ、配電線を通じて200vや100vの電気が各家庭に供給されています。

 電圧を下げれば電流は増えますので、こうしてどんどん電圧を下げながら、枝分かれしてたくさんの箇所に電気が送られていきます。今回の東京電力が行っている計画停電では、66kvの1次変電所のスイッチを切っていますので、そこから下のレベルへの電力供給がストップすることになります。

――鉄道のダイヤは初日と比較すると大幅に改善されたようですが、例えば病院や信号機など、電力供給が不可欠と思われる場所へのピンポイント送電は不可能なのでしょうか。

横山教授:鉄道のような大口の電力需要があるところへは、もともと66kvのようなある程度高電圧でも電気を送ることができますが、病院や信号機は、6.6kvより下に位置するので、今回の計画停電ではピンポイントの送電は難しいでしょう。たとえ計画停電が6.6kvの変電所のスイッチを切って行うとしても、送電を切る仕組みが複雑すぎて、現実的に小口の需要家へのピンポイントの送電は不可能と思われます。

 確かに、交通事故も起きましたので、たとえば信号機は蓄電池式にするという対策を施すのが良いかもしれません。多くの大病院では自家発電が可能と思われますので、計画停電にきちんと備えるしかないでしょう。停電後に自家発電が稼動しても、実際に発電するまで少し時間がかかりますから、停電になる前から動かす必要があります。

 また、3月22日の海江田万里経済産業相による会見では、この計画停電を5グループから25グループへ細分化する方針が明らかになりました。これにより、停電実施をより細かく周知することも可能になるでしょう。

――計画停電に備えるためにも、実施するか否かの通達が重要かと思われますが、停電開始時刻の直前にならないと実施か中止かの決定ができないようです。需要予測はそれほど困難なものなのでしょうか。


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