WEDGE REPORT

2011年3月25日

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 東日本大地震やその後の大津波などによって原子炉の損壊など大被害を受けた東京電力の福島第1原子力発電所(福島県大熊町・双葉町)。大幅な電力の供給不足に陥った東電は供給エリアの関東一円で計画停電に追い込まれたが、一方で戦後の10電力体制 の矛盾を一気にあぶり出した。

 戦後の電力事業は「国の関与を極力排する形」(電力業界関係者)で進められ、原子力開発も、“国策民営”だった。だが、今回の大事故は東電に廃炉処理や地域住民に対する補償などで莫大な費用負担を生じさせるのは必至。関係者の間からは「東電の一時国有化」の話も出始めており、戦後長く続いてきた10電力体制(注)の解体・再編へ一気に進む可能性もある。

東電管内の電力供給をどう確保する?

 東電の総発電能力は6449万㌔ワットだが、このうち原子力は1731万㌔ワットで、全体の28%を占める。だが、立地場所は福島第1、福島第2(福島県楢葉町・富岡町)、柏崎刈羽(新潟県柏崎市・刈羽村)で、いずれも東北電力の供給エリアで、東電にとってはエリア外だ。

 供給エリアが、人口が密集する首都圏のため、「エリア内では原発の立地場所を確保するのが難しかった」(電力業界関係者)という事情がある。東電では福島、新潟に続く3番目の立地拠点として、青森県東通村での建設準備を進めているが、これも東北電力の供給エリアだ。このため立地先の地元からは「首都圏の電力をなぜ、我々が補う必要があるのか」という素朴な疑問が強く、東電では立地地域の振興策など地元対策に力を入れてきたという経緯がある。

 今回の福島第1原発の大事故はこうした地元の反発をより拡大する可能性が強く、廃炉が予想される福島第1は別にしても、地震で停止した福島第2原発や定検中の柏崎刈羽原発の3基の再稼動も非常に難しそうだ。

 このため、電力需要期の今夏に向けて東電では休止している横須賀火力発電所の再稼動や、地震の影響を受け休止中の鹿島火力発電所などを早期に立ち上げる方針だが、「それでも最大1500万㌔ワット程度の不足が予想される」(電力関係者)。

 10電力体制の補完策として力を入れてきた電力の広域運営も今回の電力不足対策としてはそれほど寄与しそうにない。日本の電力設備はほぼ糸魚川・静岡構造線を境に東の周波数が50ヘルツに、西が60ヘルツとなっている。歴史的に日本に電力設備が導入された際、東地域はドイツのシーメンスを中心とした技術、西地域は米国のウェスティングハウスを中心とした技術に由来するためだが、周波数が異なると電気はそのまま送電できない。

(注)10電力体制:国家管理だった戦前の電力行政が1951年に民営化して以来、民間電力会社9社が割り当てられた地域内での電力の発電から送・配電までを一貫して担当している。
現在では、この9電力会社(北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力)に沖縄電力を加えた10電力体制で運営されている。
 

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