4月12日、政府は福島第一原発1~3号機の事故の深刻度を国際評価尺度で最悪の「レベル7」(暫定)に引き上げた。これをテレビや新聞が大々的に報じたことで、私たちは今回の事故の重大さを改めて認識し、危機感を強めることとなった。
だが、知りたいのはそんな情報か?
新聞各紙は当日夕刊トップで、一斉に「レベル7」への引き上げを取り上げた。見出しには「チェルノブイリ級」や「最悪」といったインパクトの強い言葉が並んでいる。だが、そもそも私たちが知りたいのは、本当にそんな情報だろうか。
事故のレベルが引き上げられたからといって、すでにばら撒かれた放射性物質の量がいきなり増えたわけではない。それよりも、いま放出されている量や今後放出される可能性を知ったうえで、どんな対策を講じていくべきか考えたいところだ。水道水は安全なのか、雨に当たったら危険なのか、被災地の住民はいつになったら元の場所に戻って暮らせるのかなど、健康や生活に則した情報が求められているはずだ。
ツイッターを使い、原発や放射線に関する分析情報をボランタリーにツイートして注目を集めた早野龍五教授(東京大学大学院理学系研究科/@hayano)は4月3日、あくまで「私見である」と断ったうえで、各地で計測された放射線量やアメダスの風データ、専門家によるシミュレーションなどから、「放射性物質が福島第一原発から大量に放出されたのは3月15日をピークに、それ以降、(海は別として)大気への大量放出は起きていない」という主旨の結論をツイートしている。
早野教授は、どのように信頼されていったか
3月12日に放射能漏れの報道が出てから、早野教授のもとには被曝や原発への対処に関する質問が数多く寄せられ、15日までの間に、「放射線」と「放射性物質」の違い、「半減期」の説明、「避難する際の注意点」など、目に見えない不安に駆られた人々の質問にひとつずつ丁寧に答えていった。
西岡武夫参院議長が13日午後に「炉心融解すれば原爆が落ちたのと同じような状態になる」と会見したのを受け、それは「不適切」と指摘し、「燃料棒は破損したが、現時点では核分裂連鎖反応は起きておらず、現場の努力で格納容器が守られれば、大惨事にはならない」と冷静に分析している。
14日に3号機で水素爆発が起きた直後に、原子力安全・保安院が会見で「格納容器は無事」と言ったことについては、「どうやって確認できたんだろう」と疑問の声を投げかけた。その後、16日午前には、政府が会見で「損傷の可能性」を指摘。午後には再び「重大な損傷の可能性は低い」と訂正するなど、政府や保安院の認識の曖昧さが露呈する格好となった。
早野教授のフォロワー数は震災前の2千人から、わずか数日で15万人まで膨れ上がり、早野教授の後を受けて、放射線の人体に与える影響や防護する対策をわかりやすく解説し始めた東大病院放射線治療チーム(@team_nakagawa)のフォロワーも24万人を超えている。
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