中国はいま某国で

2011年5月9日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 「餓」島と呼ばれ無数の日本兵士が疾病と飢餓に斃(たお)れたガダルカナルが、中国人の中国人による、中国人のための島になりそうな勢いである。

 同島にはいま人口7万人の街ホニアラがある。ガ島を含み独立国となったソロモン諸島の首都だ。

 地元紙『ソロモン・スター』過去1年余りの見出しを見ると、そのホニアラが「すっかり中国人の街になった」と嘆く記事にぶつかる。

 「中国人の店にあるのは期限が切れた商品だけだ」と苦情を言う投書があれば、「地元FM局を中国人が買収」したと伝える報道がある。

 「中国人商店主が900万ドル以上脱税」「中国人マットレス製造業者、薬品含む汚水垂れ流しで操業停止へ」「中国漁船6隻、違法な漁労」と、記事は次々見つかる。中国から定期的に売春婦を連れてくる中国人業者がいるらしい。そんなこともわかる。

台湾と外交を維持するソロモン諸島

 南洋の小さな国に、中国人たちはその旺盛な商魂で不連続の変化をもたらしたことが窺われる。

 当然反発が生まれた。2006年4月に中国人商店を狙った大規模な暴動が起き、チャイナタウンでは商店の9割が焼き尽くされたといわれる。

 この時の騒ぎは、直前の首相選任に中国人が贈賄で糸を引いたと目されたのが発端だった。小規模な暴動はその後も絶えない。10年12月にまたもや一触即発となり、中国系商店はみなシャッターを早めに下ろした。

 ソロモン諸島はいまなお台湾と外交関係を維持する国である。台湾は医療や衛生、太陽光発電などの協力を続けている。10年3月には馬英九総統自らが訪問、時期を合わせて台湾海軍の艦船を寄港させまでした。関係維持を切望すればこそだろう。

 北京には面白いはずがない。が特段手を打たずとも、中国人が自発的にガダルカナルへ流入する。やがてホニアラ政治経済の中核を握ってくれる。アドレナリン旺盛な外向的人民の、輸出というか奔出─これは北京にとって一種の巧まざる武器となり、ガ島でその力をいかんなく発揮している。

 ところでガダルカナルには金鉱がある。一帯の金鉱脈は世界有数とされ、豪州金採掘大手アライド・ゴールド社は同島で金鉱山を開発中だ。別の島、イザベル島ではニッケル鉱山の開発に日本の住友金属鉱山が乗り出した。

 資源産業が将来この国を潤すとき、人口の9割以上を占めるメラネシア系の人々より多くの恩恵に浴すのは、今のままなら中国系住民か。

バヌアツ、サモア
反中暴動の危険

 中国人が急に増えすぎ問題が起きているのはバヌアツでも同じだ。同国のモアナ・カルカッセス内務大臣は最近、建設業に従事する中国人に与えた労働許可証を、今後更新しないよう指示した(『バヌアツ・デイリー・ポスト』2010年12月3日付)。

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