赤坂英一の野球丸

2018年8月1日

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 いよいよ今週末の5日(日)から、阪神甲子園球場で高校野球選手権大会が始まる。第100回記念大会の今回は元巨人の松井秀喜氏(星稜出身)が始球式に登場することもあり、初日から大いに盛り上がりそうだ。が、その前に心配でならないのが、今年の異常なほどの猛暑である。7月以降、全国規模で熱中症による死者、被害者を続出させている暑さへの対策はどうなっているのだろうか。

(gyro/Gettyimages)

 一般のファンは覚えていないかもしれないが、昨年の第99回大会では、開会式の最中にプラカード嬢の女子高生が熱中症で倒れた。開会式が始まって37分、八田英二・日本高野連会長の挨拶が行われているとき、滝川西(北北海道)のプラカードを持っていた市立西宮の女子生徒が、突然前のめりに昏倒。観衆がざわめいている中、大会関係者が女子の両肩を抱えてグラウンドから連れ出し、救護室へ運んでいる。

 女子高生はその後、すぐに意識を回復し、生命や体調に別状はなかったと発表された。とはいえ、現在もYouTubeなどに残っている画像を見ればわかるように、目の前で女子が1人倒れているのに、周囲の高校球児たちは無反応で突っ立ったまま。八田会長もまるで気にするそぶりを見せず挨拶を続け、その後も何事もなかったように10分間セレモニーが行われた様子はいささか異様に映る。現に、ネット上では批判の声も飛び交った。

 そうした昨年の事例に加え、今年は大会前に大阪府教育委員会から高野連に対し、試合開始時間、大会時期の変更なども含めた暑さ対策の検討が要請された。これを受けた高野連では、まず開会式の際に選手とプラカード嬢に水のペットボトルを配布。関係者の挨拶が始まる前、これを飲む時間を設けるという。

 しかし、それなら挨拶そのものを短縮か、いっそ省略すればいいのではないか。昨年の開会式では朝日新聞社の社長が大会の歴史を長々と話していたが、高校生が熱中症で卒倒するほどの猛暑の中、野球に直接関係のない講釈を聞かせることにどういう意味があるのか。主催者の朝日新聞社社長、高野連会長の挨拶を二言、三言で済ませ、文科相の挨拶を省略すれば、昨年の場合は女子高生が倒れる前に開会式は終わっていたはずだ。

 昨年は予選の埼玉大会の開会式でも、数人の選手が熱中症の症状を訴えた。今年は千葉大会の開会式と開幕戦で約30人が熱中症となり、野球部員2人が救急搬送。さらに熊本大会ではスタンドで応援していた観客34人が病院に搬送されている。どれもこれもマスコミに報じられて明らかになったケースで、現実には公にされていない潜在的熱中症患者が相当増えているはずだ。一部の高校関係者は以前から「お偉方の挨拶を短くすればいいんだ」ともらしており、私もまったく同感なのだが、一向に実現する気配がない。

 昨年は甲子園でも熱中症で退場となる選手が出た。私が取材した仙台育英-日本文理戦では、仙台育英の捕手が試合中に目眩や手足のしびれを訴え、九回の守備から交代、救急車で西宮市の病院に運ばれている。仙台育英では予選の宮城大会でも同様のケースが発生しており、病院に担ぎ込まれた選手は点滴を受け、ひたすら静養に努めるそうだ。プロであればともかく、高校生が点滴までしながら野球をやることにどういう〝教育的意義〟があるのか、疑問に思わざるを得なかった。

 せめてもの猛暑対策として、埼玉県では2年前から、通常は五回終了時の一度しか行わないグラウンド整備を、三回と六回終了時の二度に増やし、この時間を水分補給に充てるよう、選手、審判、観客に勧めている。が、抜本的解決策と言えるかとなると、今大会の開会式中のペットボトルと同様、やはり付け焼き刃的な印象が強い。

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