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2011年6月16日

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宮田徹也 (みやた・てつや)

1970年横浜生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科芸術系教育専攻修士課程修了。東京文化財研究所美術部、ZAIM、横浜デザイン学院非常勤講師を経て、美術評論活動を展開中。主な連載は、批評の庭、アートアクセス、てんぴょう、ヒグマ春夫、その他多数(ウェブ)、「音楽舞踊新聞」「テルプシコール通信」「コルプス」「新かながわ新聞」(紙)など。「コルプス」は編集委員、「代々木通信」は編集長を担当。

ポール・セザンヌ 《赤いチョッキの少年》 1888-1890年 油彩・カンヴァス National Gallery of Art, Washington/Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, in Honor of the 50th Anniversary of the National Gallery of Art

 近年、印象派の展覧会は日本で数多く開かれている。それでもこの美術展のキャッチフレーズが、「これを見ずに、印象派は語れない。」と強気な理由は? ワシントン・ナショナル・ギャラリーの印象派とポスト印象派のコレクションが優れているのは、世界的に有名な話。例えば今回登場するセザンヌやルノワールの作品は、各国のあらゆるカタログや近代美術の解説で必ず見られるような“超”がつく名作ばかり。つまり、質が高いのだ。ワシントン・ナショナル・ギャラリーの規約では、同美術館に常設展示されている作品は、最大で12点しか貸し出さないことになっている。今回はそのうちの9点もが日本に来ている。

 なぜこのようなことが実現したのか? 同展覧会を担当した国立新美術館主任研究員、平井章一氏に展覧会趣旨を交えて話を聞いた。

 「ワシントン・ナショナル・ギャラリーは開館70周年を迎えた現在、本館である西館を改修中なのです。そのため、他の場所で同美術館が誇る常設を含めた作品を見てもらおうという運びとなりました。日本に来る前は、第三章を抜かした作品群50点が、ヒューストンで展示されました。こちらで作品を展示するという話になった際に、『もう少し作品を足したい』とワシントン・ナショナル・ギャラリーの館長へ直談判に行きました。その結果、素描や水彩が掲載されたリストをいただくことができました」。

印象派のキーワードは
「動き」と「都市」

 大改修があったからこそ実現した展覧会だったのか。印象派の素描って、あまり聞かないけど…。

エドガー・ドガ 《舞台裏の踊り子》 1876/1883年 油彩・カンヴァス National Gallery of Art, Washington/Ailsa Mellon Bruce Collection

 「印象派は二つの側面を持ちます。まずは一瞬の動きを逃がさないこと。ドガの場合は踊り、モネの場合は光です。それを瞬時に描くのが素描です。もう一つは都市をモチーフにしたこと。都市を素描で描くことによって、上流階級だけでなくそこに住む一般の人々が作品に親しみを感じやすいだけでなく、油絵よりも安価に作品を手に入れることが可能だからです。それは印象派という運動の促進にも繋がりました。ですから、印象派は紙媒体を大切にしていたのです」。

 なるほど。それならより一層貴重な機会じゃないか。紙の作品は27点展示されている。油彩と紙を並べて展示することは出来なかったのだろうか?

 「ワシントン・ナショナル・ギャラリーからは、展示の章立ては自由でいいと任されました。質の高い油彩画56点が1、2、4章で展示されています。3章でちょっとほっとしてもらおうと考えました」。

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