オトナの教養 週末の一冊

2018年9月28日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 宇宙エレベーターの開発に取り組んでいる技術者の話をラジオで聞いた。4年前、幕張メッセで開かれた宇宙展で展示を見たときは、奇抜なアイデアぐらいに受け止めたのだが、実際はかなり具体的な検討がなされていることに驚いた。

宇宙エレベーターの予想図(写真:Science Photo Library/アフロ)

科学の最高の語り手が語る「宇宙エレベーター」

 本書にも、宇宙エレベーターが実現可能かどうかの話がある。宇宙空間に宇宙船や国際宇宙ステーションの部品を運ぶコストは非常に高いので、コストを減らす一つの手立てとされるのが、宇宙エレベーターである。

 <天までロープをのぼるという考えは、おとぎ話の『ジャックと豆の木』のように昔からあるが、ロープをはるか宇宙まで伸ばせば現実になる可能性がある。そうすると、地球の自転による遠心力が重力を充分に打ち消してくれるので、ロープは落ちてこなくなるのだ。ロープは魔法のように空へ鉛直に伸び、雲のなかへ消えるだろう。>

 狐につままれたように感じるが、そこは現代理論物理学の第一人者で、科学の最高の語り手の一人であるミチオ・カク教授。丁寧に説明してくれる。

 <たとえば、ひもにボールをつけて回す場合を考えてみよう。ボールは重力に逆らっているようにも見えるが、これは遠心力がボールを回転の中心から外向きに押し出しているからだ。同じように、非常に長いロープは地球の自転によって空に伸びたままとどまるのである。地球の自転以外に、ロープを支えるものは必要ない。理論上、人間がこのロープをのぼって宇宙まで行くこともできる。>

 なるほど、そういうわけか!

 とはいえ、ロープにかかる60~100ギガパスカルもの張力に耐える材料が見つからず、長い間、宇宙エレベーターのアイデアは机上の空論だった。

 カーボンナノチューブが発見されたことにより、突如関心がよみがえったのだという。カーボンナノチューブは鋼線よりはるかに強く、軽いので、宇宙エレベーターを支えるのに必要な強度レベルをゆうに上回る。

 もちろん、「おそろしく手ごわい現実的な障害」はある。まずは、カーボンナノチューブの長いケーブルをつくる技術が必要なこと。さらに、宇宙エレベーターが実現したあかつきには、人工衛星や微小隕石との衝突、ハリケーンや高潮や暴風雨など地上の悪天候による問題も起こりうる。

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