コモディティー化に 対応できない日本勢
電機全滅─。電機メーカーの第3四半期決算を見渡すと、そんな言葉が浮かぶ。営業利益を稼いでいるメーカーは三菱電機などごくわずか。テレビやビデオ、カメラなどデジタル家電製品を手掛ける部門は軒並み大幅な赤字に陥った。「ハイスペック(高機能)なエレクトロニクス製品はもう要らない。安ければ買ってもいいけど・・・・・・」。消費者がそんな裁定を下したようだ。
金融危機後の消費減退や価格下落、円高の定着。背景には様々な要因があり、その克服は容易ではない。しかし、テレビやカメラの販売不振とは対照的に、年末商戦で売れた商品もある。「ネットブック」「ミニノート」とも呼ばれる低価格パソコンだ。少し前まで「5万円パソコン」と話題になったが、データ通信端末と回線加入契約をセットで購入すれば端末価格がただ同然となる「100円パソコン」の登場で、人気に火がついた。携帯電話の普及を加速させた「0円ケータイ」をほうふつさせる現象だ。全国大手家電量販店の販売データをまとめている調査会社のBCNが集計した08年の調査によると(図参照)、NECや東芝、富士通、ソニーなど日本の大手は日本市場でさえ、トップ5に1社もランクインしていない。
「100円パソコン」が消費者にとって、トータルコストという観点で本当に有利かどうかは、使用頻度など利用者の個別状況にもよるが、米国や日本の大手メーカーからの受託生産や設計受託で力を付け、自社ブランドで世界展開を始めた台湾勢の「ネットブック」は、機能面では日本勢と全く遜色ない。
画面サイズも大きくなり、「MSOffice(マイクロソフト・オフィス)」ソフトの搭載も増えている。メモリーの記録容量も大きくなった。もはや、10万円、20万円とカネを払って、パソコンを買う必要があるのか。ネットブックの伸長は、大多数の消費者がパソコンのように「コモディティー(日用品)」化した商品は、「機能」よりも「価格」で選ぶ傾向が強まっている現実をメーカーに改めて突きつけた。
コモディティー化による価格低下をどう防いで、次の新製品投入時に販売価格を上げる(戻す)か。電機産業の大きな課題だ。テレビ、ビデオ、オーディオ機器、デジタルカメラ・・・・・・、価格は一貫して下がっている。「デジタル時代は半導体チップにプログラムをどう書き込むかが勝負を分ける。差異化が難しい」。経営者も技術者もこう嘆く。そして既存製品よりも、少しでも機能や性能の高い製品を開発して、発売当初の価格を少しでもつり上げ、ごく短い回収期間で利益を何とか確保しようと、製品企画の知恵と市場投入のスピードを競ってきた。
国内市場で少子高齢化の「自覚症状」が現れ、新製品に飛びつく「アーリーアダプター」として需要をけん引してきた10歳代後半~30歳代前半の消費が落ち込んでも、「新製品投入で値段を戻し、価格が下がる前に量を売って利益を確保する」という、アナログ時代から続いた収益モデル自体は本質的に変わっていない。