解体 ロシア外交

2011年7月28日

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 福島第一原子力発電所(以後、福島原発)の事故が世界に与えた衝撃は大きく、各国で原発の安全性が問われて原発政策の見直しが行われるようになり、特に欧州などで原発からの撤退の趨勢が見られるようになった。

 だが、旧ソ連諸国(すでにEUに加盟しているバルト三国を含む15カ国を対象とする)では、基本的に原発拡大路線が保持されている。旧ソ連の現在の原発保有国はロシア、ウクライナ、リトアニア(EU加盟国)、アルメニアであり、設置計画国はベラルーシ、カザフスタンだが、どの国も計画に変更はない。

 6月末にEU周辺7カ国が、EU方式の原発ストレステスト(耐性試験)を受けることになり、ロシア、ウクライナ、アルメニアのほか、原発設置計画中のベラルーシもそれに合意したり、各国が予算をつけて原発の安全対策を強化したりする一方、原発の拡大路線に変更は見られない。

 他方、ロシアは原発計画をも自国の外交カードにしている。そして、ロシアの原発政策をめぐる攻防では、まるでパイプラインをめぐる欧米諸国との対立のような図式が見られ、日本もそのプレイヤーとして大きな位置を占めている。日本では福島原発事故により、新規原発の建設が難しくなっているため、原発にかかわる企業の活動は、震災後、海外で活発になっているのである。

 そこで今回は、原発保有国、および計画国の原発の状況、原発政策を概観した上で、ロシアの原発輸出政策を巡る日本との駆け引きを前後編に分けて見ていきたい。

資源大国・ロシアが原発を推進する理由

 旧ソ連では1954年にモスクワ南西のオブニンスクで、実用規模では世界最初の原子力発電所の運転が開始され、以後、改良を重ねて、多くの原発が建設されてきた。その技術はソ連の継承国であるロシアに主に引き継がれている。

 ロシアの現在の原子力政策は、2000年5月にロシア政府が承認した「21世紀前半のロシアの原子力開発戦略」に基づき、2003年に策定された「エネルギー戦略」に示されている。つまり、当時の大統領であったウラディミル・プーチンの考えによるものであり、2020年までの計画が遂行中となっている。加えて、プーチンは、2006年1月の大統領年頭記者会見で原発の推進を表明し、2030年までに国内の電力総需要のうち原子力発電の割合を25%(現在は16%)に引き上げると表明した。

 現在、ロシアでは28基の発電炉(極東のビリビノにある4基の小型原子炉を含めると32基)が運転中で、世界第4位の規模である。また、2025年までに国内で24基の原発を建設する予定であり、うち、8基が建設中である。船上の原子炉で発電を行う「海上原発」の建造も進めており、12年の実用化が目指されている。

そして、将来的には、ナトリウム冷却型高速炉を基本とした完全に閉じた核燃料サイクルに向けて徐々に移行することを目指しており、国営企業ロスアトムは2030年を展望した原子力発電の将来構想を示し、新世代の原子力技術開発の計画を提案している。

 それでは、何故、資源大国であるロシアがこれほど原発の拡大に固執するのだろうか。

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