WEDGE REPORT

2018年10月23日

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はじめて月に向かった日本の探査機は、1990年に文部省宇宙科学研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)が打ち上げた「ひてん」。月の軌道に到達した3番目の国になった(aurielaki/gettyimages) 写真を拡大

 人類が最後に「月」に行ったのは1972年12月、46年前になる。アメリカはアポロ11〜17号まで合計12人を月に送った。長い間、月から遠ざかっていた人類であるが、21世紀になり、再び月を目指す動きが出てきている。

 ZOZOの前沢友作氏がイーロン・マスク氏率いるスペースXのBFR(ビッグファルコンロケット)で月を周回してくるということが話題になったが、アメリカのみならず世界中の「宇宙Geek(ギーク)」たちが、着々と準備を進めている。アマゾンのジェフ・ベゾス氏率いる「ブルーオリジン」、テスラのイーロン・マスク氏率いる「スペースX」などだ。ブルーオリジンは、2019年から宇宙旅行のチケットを販売すると発表し、スペースXにいたっては、2024年に人類を火星に送り出し、2060年には火星に100万人を移住させるとしている。

 もちろん、日本でも準備がはじまっている。今年7月、月・火星の探査活動を進める「国際宇宙探査センター」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置された。センター長に就任した佐々木宏氏に、なぜ人類は月を目指すのか聞いた。

 そもそもどうして、「月」や「火星」をめざさなければならないのだろうか。

国際宇宙探査センター長・佐々木宏氏

 「人類は誕生以来、活動領域を拡大させてきました」(佐々木センター長、以下同)

 アフリカで誕生したホモ・サピエンスは世界中に広がり、コロンブスに代表される大航海時代、ライト兄弟による航空機の誕生、スプートニクショックで幕開けした宇宙時代へと活動領域を拡大させてきた。活動領域を広げると同時に、大量のエネルギー、特に化石燃料を使用してきた。その結果、地球環境問題が重くのしかかるようになってきた。

 「実際、地球が人類にとっていつまでも住み心地の良い場所であるという保証はありません」

 恐ろしい話ではあるが、誰もその可能性を否定することはできない。多様な場所に生きる場所を確保しておくことは、リスクヘッジになる。「人が月や火星住むなんて夢物語じゃないの?」と笑い飛ばすことはできないのだ。

 「アポロ計画(1961年〜72年)までは、アメリカとソ連の国威発揚や、行くことだけが目的の冒険的な意味合いが強い時代でした。現在は、より詳細な調査を行うために、月の周回軌道に宇宙ステーションを設置することが検討されています(アメリカが中心になって行われる『月近傍ゲートウェイ』。これが、現在運用されている国際宇宙ステーション(ISS)(補足:2024年までの運用継続が決定)の後継プロジェクトとなる)。JAXAでは、2021年度に小型月着陸実証機(SLIM)を、さらに2030年頃には欧州やカナダの宇宙機関と協力して人間を月面着陸させる計画です」

 では、月面着陸して、いったい何をするのだろうか? 月には「ヘリウム3」と呼ばれる、核融合の燃料になる元素が存在するとされている。「ヘリウム3をスペースシャトル1杯分(25トン)地球に持ち帰って核融合に使うことができれば、アメリカが消費する電力の1年分が発電できると試算されています」(『世界はなぜ月をめざすのか』佐伯和人、講談社ブルーバックス)

 こんな夢のような資源もあるが、最も注目されているのは「水」だ。月の極域には「水(氷)」が存在している可能性が高いとされている。

 「月の水を使用することができれば、水素、酸素としてロケットの燃料にすることができ、地球から持っていくよりも効率的です」

 つまり、月を開発することでより遠くの惑星や宇宙に行くための前進基地として使用することができるということだ。人間が住む環境としては、大気や磁場のない月よりも、大気や磁場のある火星のほうが好ましい。

 しかし、地球から月までの距離は38万キロであるのに対して、火星は5759万キロと、月のほうが圧倒的に近い。しかも、月はいわゆる「うさぎの形」が見える側がいつも地球の方向を向いているため、自転する火星のように地球とは逆側を向いたときに通信が途切れるという心配もない。

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