中国はいま某国で

2011年8月9日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 中国人富豪たちがカナダのバンクーバー、それも海を望む高級住宅街ウエストサイドの高額不動産を大挙して買い、市況を吊り上げている。

 物件の豪華さは、例えば中国人をもっぱら顧客にする仲介業者、クラレンス・デベル氏がウェブサイトに掲げる写真や間取りを見るとわかる。

プールとクルマ12台収容車庫付き
中華料理向けのキッチンも完備

 敷地面積505坪、寝室と浴室を6つずつ備える母屋の床面積が200坪(車庫など除く)という新築物件は、邦貨にして約5億4000万円也。

 中国人目当てで設計した証拠に、広いオープンキッチンに加えて密閉調理室がある。火力の強いガス台と強力換気扇を備え、中華料理の油や臭いが広がるのを防ぐ「ウォク(wok)キッチン」がないと、転売時にサヤを抜きたい中国人には買ってもらえない。

 別の、6億円以上で売却済みの物件にも、ちゃんとウォクがある。こちらはプールとクルマ12台が収まる車庫付きで、眼下に太平洋を一望するとか。

 ある暴風雨の晩、デベル氏のもとへ大陸中国の男性から電話がかかった。男性の妻が、同氏を通して買った豪邸に子供と住んでいる。心配だから様子を見に行ってくれ、と。こんな要望に応える同氏のスタッフたちは、中国人顧客の銀行口座開設を手伝い、子供の学校を有名校の中から見つけてやり、PTAでは通訳を買って出る。

 実際、少なくない中国人顧客は大陸本土に本拠をもつ。資産の形成と分散、子供とひいては一族の将来を考えた投資もしくはリスクヘッジ。それがバンクーバーへの投資動機らしい。

 動きが特に活発なのは中国でいう春節前後の時期で、売買が成立した戸建て物件数は今年2月に前年同期比42.6%、2年前との比較では138.9%の伸びを見せた(Real Estate Board of Greater Vancouver 調べ)。

 シンクタンク「公共政策フロンティア・センター」の調べによると、バンクーバーで平均的住宅を買おうとすると年収の9.5倍払わなくてはならなくなった。ニューヨーク(6.1倍)、ロンドン(7.2倍)以上に住宅を入手しにくい。高額物件の市況を押し上げる中国人の買いっぷりが影響したのは間違いがないところ。

ドイツの有名古城
集団結婚式の舞台に

 ドイツ・バイエルン地方にあるお伽の城ノイシュバンシュタインで、31組の中国人カップルが集団結婚式を挙げた。6月初めのこと。純白のドレスをまとって愉快に踊る花嫁たち、熱い接吻を交わす新郎新婦の照れも躊躇もない姿が、世界中に放映された。

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