オトナの教養 週末の一冊

2018年11月29日

»著者プロフィール
著者
閉じる

本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 さまざまな企業で、TOEICの点数が昇給の条件になるなど、グローバルに活躍するためには英語力は必須だと考えられている。しかも、そのモデルと考えられているのは、白人のネイティブスピーカーである場合が多い。日本人の「英語熱」は子どもたちにも及び、2020年度からは小学校で、これまで外国語活動だった実質、英語の授業が教科に「格上げ」される。グローバルに活躍するためには、英語力は本当に必須なのか。巷で信じられている早期教育は有効なのか。『英語教育幻想』(ちくま新書)を上梓したカナダ・ブリティッシュコロンビア大学教授で、応用言語学が専門の久保田竜子氏に話を聞いた。

(paylessimages/iStock/Getty Images Plus)

――世の中では「グローバルに活躍するためには英語は必須だ」という風潮が強く、幼少期からの早期教育や、大人でも英会話スクールに通っている方もいます。海外駐在員の研究を行っている久保田先生から見て、グローバルに活躍するために、英語は必要ですか?

久保田:英語は、もっとも学習されている言語で、便利な面がたくさんありますので、基本的には必要です。学問の分野やメディア、航空管制などではもはや英語が共通語になっているので、その広がりは認めざるを得ません。

 ただし、グローバルに働くために、英語力は必要条件ではありますが、十分条件ではないと考えています。駐在員の研究でわかったことは、英語ができるからといって、世界中のどの地域でも働けるとは限らないことです。それ以上に仕事に関する専門知識やコミュニケーション能力が重要になります。特にコミュニケーション能力については、駐在員のみなさんが指摘するポイントです。

――ここで言う「コミュニケーション能力」というのは「英語力」とは違うのでしょうか?

久保田:経団連の企業向け調査の項目では、コミュニケーション力と語学力はわけられています。

 これまでの駐在員のインタビュー経験からすると、かれらが指摘するコミュニケーション力というのは、語学力を含むけれども、それ以上に相手の気持ちを推し量り、相手に伝えることができる能力だと考えらます。

 海外で働く場合、現地法人のホワイトカラー層には英語を話すことができる人が多いのに対し、工場で働く人たちは現地語しか話すことができない場合が多い。そうした場合には、少しでも現地語を使いながら意思疎通する、コミュニケーション能力がとても重要になります。タイでの駐在員経験がある女性は、飛び込みで営業をしたけれど、相手は英語ができなかった。でも、彼女は身振り手振りで一生懸命コミュニケーションを取ることで、最終的には成功したと言います。

 私が北米からアジア行きの飛行機に乗ったときのことです。私の隣に中国系の男の子が、その隣にアジア系の男性が座っていました。その男の子は、友だちから借りてきたゲーム機の電源の入れ方がわからない様子で男性に「how to open?」と尋ねましたが、男性は、なんのことがわからず困惑していました。すると、男の子は携帯電話を取り出し、スイッチを押し「open」と言ったのです。中国語では「スイッチを入れる」の意味にも「開ける」の意味にも同じ「開」という漢字を使うので、彼はopenという単語を使い、ゲーム機のスイッチの入れ方を尋ねていたのです。こうしたコミュニケーション能力に長けている子どもは多いですよね。コミュニケーションはそうやって取ることもできます。

 また、英語を話す人は全世界の4分の1程度です。実際に海外駐在員として働く場合、英語圏以外では日常生活を営むために現地語が必要となってきます。

関連記事

新着記事

»もっと見る