オトナの教養 週末の一冊

2017年4月7日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 数百年後、毎日話す言葉が日本語ではなく英語になっていたら……。これだけ英語の早期教育が叫ばれ、小学校での英語の教科化が決定した日本ではあながちあり得ない話でもないのかもしれない。

 事実、アイルランドは世界に名だたる文学などを擁していたにもかかわらず、わずか200年ほどでアイルランド語よりも、英語が多くの人の日常の言葉となってしまったのだ。

 そのような言語交替はどのように起きるのか。また現在のアイルランドで話している英語はどんな英語なのか。『英語という選択 アイルランドの今』(岩波書店)を昨年上梓した明海大学外国語学部教授で、言語学が専門の嶋田珠巳氏に話を聞いた。

――お恥ずかしながら、アイルランドと聞いてアイリッシュパブやギネスビールくらいしか思い浮かばなかったのですが、どんな国なのでしょうか?

嶋田:一般的には馴染みが薄い国ですよね。アイスランドと間違えられることもよくあります(笑)。

 大学時代、初めてアイルランドに留学生として滞在しました。その時は、海外での生活自体も初めてでカルチャーショックを受けることもしばしばありました。アイルランドは、雨が多い国なのですが、雨が降り始めても、外に干してある洗濯物を取り込まないんです。日本人の私からすると、取り込まないのは抵抗があったので、ホストマザーに聞くと「いちいち雨の度に取り込んでいたら埒が明かない」と。

 また、アイルランドにおいてパブは重要な場所で、人口が少ない町でも、教会が1つ、パブは3つほどあるイメージです。その地域の情報を得たいならまず行くべき場所と言えるでしょう。パブは情報交換の中心で、日本人の私が話を聞きに行けば、翌日には街中に知れ渡っていたりします。パブには常に人が集まって会話を楽しみ、音楽や演劇、口承文学を楽しむことができます。アイルランドでは、こういったパブでの楽しみを「クラック」と言います。

 そしてアイルランドの人たちは、パブで音楽が流れているときには、大きな声で話しますが、だいたいいつも恥ずかしがり屋で、優しくて、人なつっこい人たちが多い印象です。日本とは島国という共通点もありますし、国民性にも親近感を感じました。

――アイルランドというとイギリスに近く英語圏だと思っていたのですが、元々はアイルランド語を話していたと。

嶋田:現状を見ると、英語圏と言っていいと思います。日本の留学フェアなどへ行くと、アメリカやオーストラリアといった英語圏の国々と並んでブースを設けています。そういうところは英語産業でも売り出そうという非常に現実的な一面を垣間見れますね。

 現在、アイルランドの憲法では、第1公用語がアイルランド語、第2公用語が英語となっています。アイルランド語は、日本の小学校から高等学校にあたる一般の学校で国語として教えられていますが、日常生活でアイルランド語を使用しているのは人口の1.8パーセントほどに過ぎません。

 一方、英語は、国民全員が理解し、話すことが出来ますし、アイルランド語を毎日使用している人たちも英語を使わなければ生活出来ませんから、事実上は英語圏とみなして良いでしょう。

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