オトナの教養 週末の一冊

2017年4月7日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――アイルランド語と英語はそんなに違う言語なのでしょうか?

嶋田:両者ともインド・ヨーロッパ語族という点では同じですが、アイルランド語はケルト語系、英語はゲルマン語系なので、言語の系統が違いますね。

 例えば、両言語では語順も違いますし、何をどう表すか、といった表現形態が違います。英語で「I love you」はアイルランド語では「愛が私のところにあなたに向かってあります」と表します。

――イギリスの植民地支配という要因がアイルランド言語交替に関わっていますが、イギリス英語とアイルランドで話している英語は違うものなのでしょうか?

嶋田:英語は非常に多くの地域で話されている言語です、ということはそれだけバリエーションがあるということになります。アイルランド英語はイギリス英語の方言の1つと見なされることもありますが、アイルランドの場合には、アイルランド語があるところに英語が入っていますので、ベースにあるアイルランド語の影響をおのずと受けることになります。アイルランド語と英語の接触によってうまれた言語、すなわちアイルランド英語が個性的にみえるのはそういった事情です。時を表す表現と、情報構造の表現といった文法の根幹にあたる部分に特色を見ることが出来るのは興味深いことです。

 現在のアイルランド英語話者は学校でアイルランド語を学んでいるバイリンガルです。学校では英語と祖先の言葉であるアイルランド語を学び、日常的なコミュニケーションとしては英語を使用しているんですね。そうなるとそれぞれの言語同士で影響を受けるようになります。

――そうなると、言葉は思考に影響すると言われますが、アイルランドの人々はアイルランド語を話し、物事を考えていた時代から、現在では英語で考え、英語を話しています。変化はあるのでしょうか?

嶋田:変化があっても不思議はありませんが、「アイルランド語で考え、英語で話す」と言った人もいます。そのことで言うと、「喉が渇いた」を、通常の英語だと「I’m thirsty」と表現しますが、アイルランド人の友人は「A thirst came on me=喉の渇きが私に来る」と言います。これは、アイルランド的な世界の見方が今でも残っていることのあらわれではないかと思います。おそらく先祖と使う単語は違っても、現実世界をどう区分するか、カテゴリー化する時の思考の「溝」のようなものを引き継いでいるのではないかと。

 また、生まれてから一定期間触れていることにより身についた言語を母語と言いますが、アイルランド人にとっての「母語」はちょっと複雑です。彼らの多くにとって母語とは言語能力的な意味合いではアイルランド英語であるはずなんですが、アイルランド語を「my native language」と表したりします。気持ちの上ではアイルランド語が母なる言葉なんですね。

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