海野素央の Love Trumps Hate

2019年1月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

トランプ大統領ツィッターより

 今回のテーマは「トランプの『国境の壁』建設と政府閉鎖」です。2016年米大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が掲げた「公約の中の公約」であるメキシコとの「国境の壁」建設実現に赤信号がともっています。トランプ大統領は、昨年の米中間選挙で下院において多数派を奪還した議会民主党の激しい抵抗に遭い、予算に壁建設費用を盛り込むことができません。その結果、政府機関の一部閉鎖が17日間(現地時間19年1月7日)続いています。

 1995年クリントン政権下で、27日間政府が閉鎖されました。トランプ大統領は今回の政府閉鎖が「1カ月ないし1年間続く可能性がある」と語り、民主党との対決姿勢を崩していません。その結果、今回の閉鎖期間が新たな記録を作るのか、注目が集まっています。

 本稿では国境の壁建設を巡る問題を、トランプ大統領とナンシー・ペロシ下院議長に焦点を当てながら分析します。

「国家非常事態宣言」検討の意味

 クリスマス休暇をホワイトハウスで過ごしたトランプ大統領は、年が明けると早速、国境の壁建設実現に向けて動きました。まず、ホワイトハウスの報道室に1月3日、全国国境パトロール会議の幹部とともに姿を現し、「昨年、1万7000人の犯罪者が国境を越えようとした」と説明し、壁建設の緊急性と必要性を訴えました。

 トランプ大統領は翌4日、記者団の質問に対して、壁建設を早めるために「自分には国家非常事態を宣言する権限がある」と述べました。同大統領は非常事態宣言の可能性を6日、改めて示唆しています。

 この一連の言動はトランプ大統領の「ディールパターン」です。自ら危機的状況を意図的に作り、緊張を高めます。そこには交渉相手を脅し、自分が優位に立って譲歩を引き出す狙いがあります。一言で言ってしまえば、非常事態宣言は「交渉カード」です。

 実はトランプ大統領は、中間選挙直前の18年10月22日、自身のツイッターの中で国家非常事態宣言を行い、中米から米国とメキシコの国境を目指して北上している移民キャラバンの流入を阻止するために、5000人以上の米軍を国境に派遣しました。トランプ支持者に影響力がある保守系コメンテーターは、同大統領のこの決断を高く評価しています。

 米FOXニュースの人気番組「ハニティー」の司会者ショーン・ハニティー氏は1月2日に放送された番組の中で、2018年のトランプ大統領の成果の一つに、「キャラバンをしっかり国境に踏みとどまらせたこと」を挙げました。トランプ大統領には再度、国家非常事態を宣言しても、支持者から支持を獲得できるという計算が働いています。

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