奨学金返済1200万円!
スウェーデン教育制度充実ぶりの陰で


伊藤清香 (いとう・さやか)

2年半の遠距離恋愛を経て、2008年冬にスウェーデンに移住した。「移民」としての生活に悪戦苦闘しながらも、新しい土地での一からの可能性に、人生を模索中。

スウェーデンで生きる 海外移住だより

どこにでもいる20代の日本人女性が、ある日スウェーデン人の青年と恋に落ち、北欧の国・スウェーデンに移住。大学では語学を専攻し、留学経験もある彼女だったが、「移民」としての生活は苦労の連続。悪戦苦闘しながらも、色々なものを得て約2年半過ごしてきた。このコラムでは、そんな「普通」の日本人が、海外生活を送る中で感じる日本社会、日本文化との違いを率直に綴っていく。

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「言葉」は、海外に住む人なら誰もがぶつかる壁の一つ。

 スウェーデンは英語の普及率が世界の中でも高い国ですので、英語ができる外国人なら大抵は生活に困りませんし、一部の仕事なら就くこともできます。しかし、それでも当然、移民として社会に溶け込みたいというのなら、この国でも言葉、すなわちスウェーデン語を習得することが第一条件になります。

 移民政策が進んでいるスウェーデンでは、そんな私達のために、どこの地区にも必ず SFI(Svenska För Invandrare)という移民のためのスウェーデン語学校が設置されています。スウェーデンでの国民番号を取得している外国人なら誰でも通える学校で、卒業後は更に、Komvux(高卒または20歳以上の人のための学校)で社会に通用するレベルを取得するまで学習することができます。高福祉・高負担国家のスウェーデンでは小学校から大学まで学費がかからないことは日本でも良く知られているかと思いますが、なんとこのSFIやKomvuxも同様。多種多様な移民難民が多い国ですので、個人のバックグラウンドに関係なく平等に教育を受ける権利が与えられているのです。それまで高負担を担ってこなかった人たちにでさえこうした福祉が行き届くというのは、移民受け入れに寛容な国だからこそできること。

充実した奨学金制度

著者が使っていたスウェーデン語のテキスト

 そんなスウェーデンでは学費無料に加えて、育児手当の支給が終わる16歳になるとCSN(Centrala studiestödsnämnden)という国営教育機構からの教育資金援助が受けられるようになります。例えば、高等教育では資金給与に加え、学業のために親元を離れなくてはいけない生徒には住居手当が。低収入の家庭は、さらに特別な資金援助を受けることもできます。

 高校以降の教育、例えば大学生になると、今度は奨学金の権利が与えられます。それには固定額の給与金と選択額の貸与金の2種類があり、授与希望額は個人で決められるのですが、バイトという概念が日本より薄いスウェーデンでは大半の学生が満額で受け取っています。その場合、金額は基本として毎月給与額2720kr+貸与額5956kr、の計8676kr。つまり、月に約104,000円、給与金だけでも約33,000円がもらえるのです!(2011年9月現在、1kr=約12円)

 当然、貸与金を受ける以上喜んでばかりいられるわけではなく、計算するとお分かりのように全プログラム(学科によって年数は異なりますが、大抵3~6年)を通してフルで奨学金をもらうと、その返済額は巨大なものになります。ですので、50歳近くになってもまだ返済し続けている人は大勢います。しかし、この制度のおかげで、こちらの学生は日本の学生のように毎日バイトに追われる必要がなく、学業に専念できるのです。

 CSNの教育援助はスウェーデン人だけでなく、EU圏内からの移民または圏外からの移民でも永住・居住ビザを所有していれば、滞在してから2年が経つと、たいていの場合受ける権利が与えられます。つまり、スウェーデンの教育制度は社会的地位や経済力が障害にならないように考えられており、つくづく、平等社会を唱えるこの国らしさを思い知らされるのです。

 しかし、世界では模範的な教育制度で有名なスウェーデンも、国内では他国同様、頻繁に社会問題の一つとして教育問題が取り上げられています。

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著者

伊藤清香(いとう・さやか)

2年半の遠距離恋愛を経て、2008年冬にスウェーデンに移住した。「移民」としての生活に悪戦苦闘しながらも、新しい土地での一からの可能性に、人生を模索中。

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